元中日のワード選手を知ってますか? 1966年 最近のワードはすっかり明るくなった。開幕から調子が出ず低打率に悩んでいたころとは、気持ちのうえでもずいぶん違ってきた。「日本の野球に慣れていないのでオドオドしていたんだ。もう打席にはいっても精神的にずっと余裕が出てきた」のが好調の原因。きっかけは二十五日の対大洋戦だった。この日の4打数2安打を入れて17打数8安打、打率四割七分で一気にアベレージを二割五分一厘に引きあげた。「いままでいろんなことをいわれたが、いまに投手に慣れてくれば絶対に打てるという自信はあった」Dクラスのネプラスカに入団した九年前に、満塁ホーマーを二度打ってから、毎年一本はたいていいるという。「いぜんは少し打てないとすぐかえられた。だが最近はよく試合に出してくれるので、投手の球種を覚えられる。バットを振るのがたのしみなんだ。満塁になったときもただヒットだけをねらっていた。一発をねらうとすぐヘッドアップして、肩が早く開いてしまうので頭の中でヒットを打つんだといいきかせていたのがよかったね。打ったのはシュートだ」打たれた竜も、ワードのバッティングがよくなったのにはびっくりしていた。「雨が指がすべって、スライダーが真ん中にはいってしまった。それにしてもよくバットが振れているね。開幕のころとは雲泥の差だ」とシタをまいた。打った方はシュートといい、打たれた竜はスライダーという。全く逆なのは妙だが、これまでワードの打った9ホーマーはほとんどがストレート。シュートや変化の大きいカーブなどは打っていない。きゃしゃなからだが、力は抜群。わずか二ヶ月で10ホーマー。マーシャルのもつ31号に挑戦するのも夢ではなさそうだが、ワードは本塁打のことをあまり問題にしていない。「本塁打はらくな気持ちでミートすれば必ず出る。それよりヒットを打って打率を二割八分ぐらいまでにもっていかないと出場できなくなるからね」これまでのヒットは六、七番の気楽な打順で打っている。五番をまかされた四試合では12打数ノーヒットで打てないとかえられるといった気持ちがわざわいしていた。この日は五番での初安打。「どこを打ってもさしてかわりはないが、いままではかたくなりすぎた。ちょうどウチの選手が対巨人戦になると気持ちが萎縮するのと同じだ。こんどの巨人戦は大きなヤマだね。堀内、城之内らが好調らしいけど、こんごは必ず打ってみせる」巨人戦は、開幕直後の一、二回戦で五番にあげられながら無安打に終わったため先発からはずされた、うらみ重なるカードだ。