元西鉄のウィルソン選手を知ってますか? 1963年 まるくとび出した目、顔の中央にデンとすわっている大きな鼻。ホオの肉がちょっとたるんでいるところもヒチコックに似ているといわれている。「冗談じゃない。もっともっとぼくは若い。八回の打球を見てくれたか。すごい当りだったろう」打った球はヒザ元のシンカーだっだそうだ。「2ストライクをとられたから、くさいボールは打つつもりだったが、ストライクだな。もしあの球を見送ってごらん。チーフ・アンパイアはきっとこれだよ」右手の親指を高く差し上げてストラックアウトのゼスチャアをしてみせた。2ストライク後安打を打つのがウィルソンのお家芸だ。「実にいい選球眼をしている」と岩本章良氏はいう。「数はおぼえていないが、左投手からはアメリカでもずいぶんホームランしている。右投手の比率からいえば、きっと左からの方がいいはずだ。右だって左だって、ホーム・プレートの上を通る球を打てば同じじゃないか」三十七歳のウィルソンをささえているのはこの自信だ。昭和十七年、D級のオーエンスポロでプロのユニホームを着てから二十一年間の野球生活。その間には十年も大リーグの経験をしている。体力的なことをいわれるとウィルソンはいつも相手にくってかかる。「オレの足がおそいって?ウソだ。肩だって強いぞ」西鉄での生活は楽しくってしかたないが、不満といえば外野にあまり使ってくれないことだそうだ。「オレの足や肩に不安を持っているのかな。なれない一塁より外野の方がずっと力が出せると思うのだけど・・・」ロイやバーマと違って日本語は全然わからないが「野球はインターナショナル。プレーをしている以上なんの不自由もない」そうだ。