●ダイムラーの考え方 Sクラスまで適用できるパワープラントとして,コンセプトカーF700に搭載したのは,下記のような内容でした。
1.8L ガソリンエンジン 直噴 ツインステージ・ターボ・チャージャ 可変圧縮比機構 HCCIとSI(Sparked Ignition 点火プラグによる燃焼)との切り換え 15kWモータ (パラレル・ハイブリッド) 7速AT F700での性能は以下の通りです。
燃費(欧州) 18.9km/L 最高出力 238馬力 最高トルク 400Nm 0→100km/h加速 7.5秒 これらを見る限り,たいへん優れた機構と言えます。
問題は前回の回答にありますように,コスト・パフォーマンスです。
ハイブリッド機構,可変圧縮比機構,EGR(内部,外部)制御機構などをあわせたコストは,おそらく100~150万円くらいになるでしょう。
これならHCCIにせず,モータ出力を50kW(バッテリ電圧 120→300V)にしたほうが簡単で安上がりです。
また負荷の軽いところは,HCCIを使わず,1.8L+可変ターボで十分でしょう。
そう考えていくと,F700のディゾットは,技術的優位をしめすのが最大の主眼であったとおもわれます。
厳しい言い方をすれば,商品化はあまり考えていないといえます。
●シリーズハイブリッド車の特徴は? シリーズハイブリッドの問題点は,大型のモータとエンジンの両方を搭載すると,コストが非常に高くなることです。
このため小型のエンジンを搭載し,常に負荷の高い運転状態で稼働させることで,エンジン効率の高いところをつかうようにします。
ところが高速道路のように連続的に負荷の高い条件では,エンジンの最高出力がモータ出力より小さくなり,モータ最高出力を維持できなくなります。
このため高速バスにや大型トラックに不向きで,路線バスや宅急便用トラックに向いていることになります。
都市内を走行する路線バスや宅急便用トラックなら,減速時のエネルギ回生ができることもメリットになります。
●シリーズハイブリッドへのHCCI適用は? エンジンは機械損失や冷却損失そしてポンプ損失(ガソリンエンジンの場合)を考えると,負荷のやや高いところに最適効率点があります。
HCCIは,SI(プラグ点火燃焼)を併用しないと,排気量に対して最高出力が低くなります。
このため路線バスに使う場合,排気量5Lではダメで,排気量10Lくらい必要でしょう。
そうなると,もともとのエンジンの排気量より大きくなります。
大型のエンジンを搭載するレイアウト・スペースに加えて,モータのスペースも必要になるので,搭載性はかなり厳しくなります。
またコストも高くなります。
●ディーゼルエンジンへのHCCI適用は? ディーゼルエンジンではコモンレールによる多段噴射により,単純な拡散燃焼ではなく,予混合プロセスを含むようになっています。
つまりHCCIの前段階(PCCI=Premixed Charge Compression Ignition)になっています。
このため均質混合気ではありませんが,HCCIのすぐ手前まで来ています。
機構的な主たる差異は,燃料噴射位置がポートか燃焼室内かです ●シリーズハイブリッドとHCCIは? どちらも燃費改善効果に対してコストが高すぎるという大きな課題があり,実現性はたいへん乏しい状況です。
これを組み合わせても,それぞれの欠点を相殺する特徴もありません。
このためもし実現するとしても,現行エンジン+シリーズハイブリッド,あるいはハイブリッドにしないHCCIになるでしょう。
●HCCIの難しさとは? HCCIの燃費改善代から見て,EGRと過給量のそれぞれの可変機構につかうと,もう無くなってしまいます。
このため安価に実現できるHCCI機構が望まれています。
簡単ですが,ご参考になれば幸いです。