こちらでも失礼いたします。
マツダとスバルの「4WD+MT」について、メーカーのルーツも含めてご説明すると、それぞれのアプローチが分かりやすいと思います。
前置き長くなりますが参考にしていただければ幸いです。
■ マツダとスバルは変わった存在 マツダとスバル似ていますね。
どちらも世界的に見て特徴ある変わったメーカーです。
スバルは縦置の水平対向エンジンと四駆を一貫した武器としており、マツダは久しくロータリーエンジンで量産してきたといういずれも世界的に希少な存在です。
■ 各々の苦境と得意分野 まずエンジンですが、スバルのフラット4は小型軽量ですが、ロータリーも小型でハイパワーです。
その性質からマツダは1970年代からロータリーを核に様々な車種に搭載し、スポーツ車両に注力しました。
しかし、1970年代に発生した2度のオイルショックによって燃費の悪いロータリーは窮地に立たされます。
そんなマツダの経営危機を救ったのは1980年登場の5代目ファミリアの大ヒットでした。
ロータリーを核とした路線をから軌道修正できたのですが、今思えばこれがマツダの迷走の始まりでもありました。
1980年というとアウディがフルタイム4WD(クワトロ)を登場させた年ですが、アウディが画期的だったのは、これまでオフロードの道具であった4WDを、高速やオンロードの運動性能を高めるための装備としてきたことです。
乗用車四駆の先駆であったスバルはさぞ悔しかったことでしょう。
さらにスバルにとって打撃だったのは、日本初のフルタイム4WDをマツダに先にリリース(1985年 6代目ファミリア)されてしまったことです。
アウディはエンジン縦置FFメーカーという4WD化に有利なレイアウトを持っているので分からなくもないですが、ファミリアはエンジン横置のFF車です。
エンジン縦置のスバルの方が遥かに簡単にフルタイム四駆を作れたのに先を越されたわけです。
この黒歴史は塗り替えられません。
スバルは乗用車4WDの王者として胡坐をかいていたのででしょうね。
しかし、この教訓を機にスバルは本腰を入れて立て直しをはかります。
スバルもまた経営危機だったのです。
それが初代レガシィ(1989年)以後の快進撃へとつながります。
しかし、迷走をはじめていたマツダはフルタイム四駆を続けませんでした。
横置FFベースではどうしても複雑でコストも燃費も不利だったからです。
そんな中でマツダは自動車史に残るロードスターとRX-7(FD)を登場させます。
マツダのアイデンディディは生粋のスポーツカーにあり、彼らの最も得意とするところです。
しかし、スポーツカーは台数が売れません。
また、デザイン面ではここ20年ばかり最先端にあり、デザイン後進国の日本ではあまり理解を得られなかったこともあります。
今年の2月「死の淵からマツダを救った一本のビデオ」が話題になりました。
<ご参考> http://thepage.jp/detail/20150208-00000006-wordleaf 20世紀末のマツダは死の淵でしたが、そこから復活するエネルギーは、生粋のスポーツカーを知るマツダの運動性能と垢抜けたデザインが、日本車で唯一欧州で認められるポジションを確立していきました。
また、ロータリーエンジンという牙を抜かれたマツダに、「スカイアクティブ」(2011年デミオから)という新たな核をもたらす動きへと発展していきます。
それがエンジン、サスペンション、トランスミッションへと革新をもたらし、ここ数年4WDにも及んできたという流れです。
■ マツダとスバルの4WDの違い マツダもスバルもクルマの本来の楽しさにフォーカスしています。
そのためMTを真面目に作っているのは日本ではこの2社だけとなりました。
一方で4WDへのアプローチは180度異なっています。
スバルは縦置できる小型低重心で左右対称の水平対向エンジンからシンプルに後輪までプロペラシャフトを伸ばして本格的なフルタイム4WDが作れます。
一方で、マツダはもはや一般的な横置FF車をベースに4WD化するしかありません。
となるとスバルのようにシンプルにはフルタイム4WDはできないので、スタンバイ式にするしかありません。
マツダはそこを逆手にとって、徹底的に効率性を求めてフルタイム4WDよりもアドバンテージを得ようとしています。
マツダの「i-ACTIVE AWD」はスタンバイ式四駆なのでAWDを語るのはやや背伸びしているとは思いますが、結構工夫されています。
エンジンのパワーは前輪にのみ繋がれて、そこから後輪へはプロペラシャフトは伸びていますが、通常はほぼ前輪駆動で走行します。
プロペラシャフトの間には一般的なジェイテクト製の電子制御カップリングなのですが、マツダは他社よりもより多くのセンサーを駆使して、4WDへの切り替わりを瞬時で行えるようにしています。
なので、人によってはフルタイムと区別がつかないケースもあると思います。
しかし、マツダは4WDでの走行時間を必要最小限に留めるように制御するのに対して、スバルはできる限り4輪にトルク配分をする制御を行います。
考え方が全く異なるのです。
マツダは基本構造の異なるスバルには運動性能では絶対に勝てませんので、フルタイムよりも燃費よ良くして性能を近づける努力をしています。
わたしは、雪道で積極的にアクセルでノーズの向きをコントロールしたいのでスバルを選びますが、滑らずスタックせず安全に雪道を走れればよい人にとっては、マツダの「i-ACTIVE AWD」はよい選択だと思います。
スバルは4WDがお家芸ですが、マツダはまだまだスポーツカーがお家芸です。
いずれも走りに拘りはもっていますが、同じスピードを得るにもアプローチが異なります。
スバルはBRZが出る前に、アルシオーネなど2ドアクーペをつくっていますが、マツダのようなヒットになりませんでした。
その点、マツダは2ドア車のアドバンテージがあると思います。
一方、マツダの4WDはスバルを追っている状態。
劣等感があるようでスバルと比較されることに神経質になっているようです。
また、いずれもMT車には拘りがありますが、スバルはご存じアイサイトとの相性の問題でMT車が限られてきました。
これはスバルに限らずあらゆる車種に共通した問題と思います。
マツダの新たなお家芸はクリーンディーゼルですが、この点においてスバルよりも大きなアドバンテージがあります。
どちらも甲乙つけがたいですが、何に重きを置くかによって優先度が変わってきそうですね。