元東映の島田雄二選手を知ってますか? 1961年 同点のまま迎えた九回一死一、三塁。水原監督が三塁コーチス・ボックスからチラリと東映のダッグアウトをみた。一番前の長イスに腰かけていた島田が電気に打たれたようにビクッと立ち上がって通路でスイングをはじめた。張本は敬遠。島田は第一球を左翼席へ代打満塁ホーマー。とびあがる水原監督。まるで劇映画のひとコマだ。ホームへかえる島田のシリを張本がバットで思いっきりひっぱたいた。背をまるくして引きあげてきた島田は無理やりに長イスの中央にすわらされた。そばから金山、山本(義)がうちわで盛んにあおぐ。橋詰が水をくんできてさし出した。試合が終わってからの島田はテレるだけ。「真っすぐだった」とだけいって手ぬぐいで顔を何度も何度もふいた。「ハア、外角高目の真っすぐです。皆川からはカーブをよく打っているから、シュートで勝負してくるかと思っていたんですよ。それに外野フライでいいんですからね、気は楽だった」ことしで五年目というのに直立不動の姿勢。新人のようだ。「ふだんはおとなしいが、人間にシンがありますね。近ごろの若い選手にはめずらしい。それになにひとつするにもなかなか慎重なところがあります」と神谷マネジャーがその人柄を説明した。これでことしの本塁打は2本目。シーズン初めに阪急戦(西宮)で打っているが、それも同じ九回で左翼へだった。「ことしの代打率は2割4分ぐらいで満足していません。でもきょうの1本でなんとかカバーできたと思っています。山本(八)が当たっていなかったので、きっとぼくに出番がくると思って準備していました」だれも話しかけなければ一日中ひとこともしゃべらないという島田がこれだけしゃべったのは珍しい。