元中日の権藤博投手を知ってますか? 1961年 試合前権藤は報道陣となごやかに話し合っていた。「去年のいまごろはテレビで一生けんめい巨人を応援していたもんですよ。広岡さんの大ファンでね」新人にありがちな無口なところもなくよくしゃべる。石本コーチは「権藤は二日しか休んでいないのでムリは承知だが、きょうはぜひ勝ちたいので投げさせる」といっていた。最後の打者広岡を一ゴロにとりベンチにかえる権藤をナインはもちろん、報道陣やカメラマンがとりまいた。巨人から3勝目、それも連続2試合完封勝ちという新人ばなれした権藤は報道陣の応対になれたもの。ヒタイにうっすらと光る汗を指先でこすりながら「前半はウエートがのらずあまりよくなかった。四回高林、坂崎に打たれたのは真ん中高目に浮いた球でした。だから一、三塁になってから慎重に投げれば点はとられないという自信がありました。長島さんを投ゴロにとった球はまっすぐです。きっと意表をついたからでしょう」とよどみなく答える。「後半はスピードがのって球にのびが出てきた。点をとってくれたから楽でしたね。もう大丈夫だと思ったのは七回ごろ。巨人ですか?さあ、わかりません。とにかく一発屋が多いですね。やはり巨人には力がはいりますよ。最近のピッチングはほとんどストレートです。フォークボールはあまり投げていません」だれかが「いまの調子ならフォークボールも必要ないね」というとニヤッと笑って「そうでもないですよ。どうも・・・」といいながらロッカーへ引きあげていった。