説明が非常に長くなるので結論から述べます。
・ポリタンクは軽油用のものを使ってください。
・入れるのは適法ですが、していいかどうかは別問題です。
給油を制止された場合は従ってください。
・お住まいの地域でどのような取り扱いがなされているかは、管轄の消防署に問い合わせてみてください。
あまり納得がいかないかと思いますので以下に詳細を述べます。
最初に、容器について誤解されているようですが、ガソリンだけでなく灯油・軽油の容器もそれぞれ法令により規定されています。
消防法(以下、法)第十六条 「危険物の運搬は、その容器、積載方法及び運搬方法について政令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
」 危険物の規制に関する政令(以下、令)第二十八条「法第十六条 の規定による危険物を運搬するための容器(以下「運搬容器」という。
)の技術上の基準は、次のとおりとする。
一 運搬容器の材質は、鋼板、アルミニウム板、ブリキ板、ガラスその他総務省令で定めるものであること。
二 運搬容器の構造及び最大容積は、総務省令で定めるものであること。
」 危険物の規制に関する規則(以下、規則)第四十三条「令第二十八条第二号 の総務省令で定める運搬容器の構造及び最大容積は、次の各号に掲げる容器の区分に応じ、当該各号に定めるところによるものとする。
一 次号に掲げる容器以外の容器 固体の危険物を収納するものにあつては別表第三、液体の危険物を収納するものにあつては別表第三の二に定める基準に適合すること。
ただし、総務大臣が運搬の安全上この基準に適合する運搬容器と同等以上であると認めて告示したものについては、この限りでない。
(中略) 4 前三項の運搬容器は、次の各号に掲げる容器の区分に応じ、当該各号に定める性能を有しなければならない。
一 次号に掲げる容器以外の容器 告示で定める落下試験、気密試験、内圧試験及び積み重ね試験において告示で定める基準に適合すること。
ただし、収納する危険物の品名、数量、性状等に応じて告示で定める容器にあつては、この限りでない。
二 機械により荷役する構造を有する容器 告示で定める落下試験、気密試験、内圧試験、積み重ね試験、底部持ち上げ試験、頂部つり上げ試験、裂け伝播試験、引き落とし試験及び引き起こし試験において告示で定める基準に適合すること。
ただし、収納する危険物の品名、数量、性状等に応じて告示で定める容器にあつては、この限りでない。
」 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示 第六十八条の五「規則第四十三条第四項第一号の告示で定める落下試験、気密試験、内圧試験及び積み重ね試験並びに告示で定める基準は、この条の定めるところによる。
」→ここから先、各容器に必要とされる具体的な数値や性能が定められています。
以上の法的根拠により、ホームセンター等で「灯油用ポリタンク」として売られているものは灯油を入れることを前提に設計、試験の上製造販売されており、あくまで「灯油」を運搬・保管することしかできないのであり、ガソリンは当然のことながら軽油を入れて運ぶことも違法となります。
同様に軽油には軽油用の、ガソリンにはガソリン用の容器を使用しなければならないこととなっています。
従いましてご質問への回答は、 【①】 軽油用ポリタンクに入れる限り適法です。
ただし、顧客自らの給油は地域により取り扱いが異なり(※1)、管轄の消防の判断により不可(※2)とされていることがあります。
※1 「顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所に係る運用について(平成10年3月13日消防危第25号)」において、規則からの引用で、顧客は灯油と軽油を自ら容器に詰めることができることとなっています。
ただしこれは消防庁から下部組織への「内部通知」であり、実際には各地域の消防本部等において、各々の行政庁の解釈次第で軽油も含めて顧客が容器に給油してはならないと判断し指導することが可能です。
逆に、顧客自ら容器にガソリンを給油してよいなどという判断は、消防法の趣旨に反するので許されません。
※2 こういったローカルルールは、建前上は方針とか指導であって、法的拘束力や罰則があるわけではありません。
しかし実際のところ消防の方針に背いていれば、悪質な業者とみなされ営業停止等の行政処分を受ける可能性もあるので、実質的には禁止と言えるものとなっています。
【②】 運搬と容器、積載に関して罰則が存在します。
法第四十三条 「次のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第十条第三項の規定に違反した者 二 第十六条の規定に違反した者 三 第十六条の二第一項の規定に違反した者」 法第四十三条の2 前項の罪を犯した者に対しては、情状により懲役及び罰金を併科することができる。
軽油用ではないポリタンク、その他不適切な容器に軽油を詰めて運搬したということになると、法四十三条の二に該当します。
そのことだけでピンポイントで摘発され実際に消防法違反で罪に問われる可能性は低いです。
しかし、その状態で何らかの事故でも起こせばどうなるかわかりません。
また別の観点から、もし仮にセルフスタンドで質問者様自身が、店員の制止を振り切って無理矢理不適切な容器に軽油を入れようとした場合、店員は緊急停止スイッチ等を押すなどして停止させなくてはなりません。
何も対処せずに給油できてしまえば店員の落ち度となり、その容器の運搬中に事故が起きれば店舗側に責任がないとは必ずしも言い切れないということになってしまいます。
万が一、明らかにそのことがきっかけとなりこのガソリンスタンドが営業停止等の行政処分を受けた場合に、機会損失による損害賠償を求めて質問者様を提訴ということになれば、質問者様も無傷というわけにはいかない可能性があります。
また、関係法令の要求を満たす軽油用ポリタンクに給油する場合でも、消防が顧客自身による軽油の容器への給油を認めていない地域の場合、それ自体は違法ではありませんが、そのことが原因となり処分沙汰になればトラブルになる可能性は否めません。
なお、店舗は契約自由の原則に基づき販売拒否ができます。
消防法ではなくて、民法です。
長くなりましたが結論として、冒頭にある通り、ポリタンクは軽油用のものを用い、明らかに違法な指示でない限りガソリンスタンド店員の指示に従って給油してください。
自ら軽油を軽油用ポリタンクに入れるのは適法ではあるのですが、やってはいけない場合・場所があるということです。
規則の文面を嚙み砕いて運用しているのは現場ですから、疑問に思ったときは上位組織(消防庁や総務省)ではなく管轄の消防署、消防本部に問い合わせてください。
その運用が不適当、違法だと思うようでしたら、上位組織に問い合わせてみることをお勧めします。