元巨人の大熊伸行投手を知ってますか? 1964年 コントロールにまだ難はあるが、大熊はダイナミックなピッチングでみごと七回まで東映をおさえきった。「少し疲れ気味だったので、かえって東映は打てなかったんじゃないカナ。それに打球が正面をつくツキも」試合がおわると、はずかしそうにいった。しかし、速球にノビがあったし、カーブ、シュートもいいコースをついていた。「多摩川の練習で藤田さんにアドバイスされてから、少しタマがはやくなったんです」藤田新コーチの効果が、ここにもあった。これまでの大熊の欠点は投げるとき、上体がつっぱってしまうことだった。それを藤田コーチに「投げるときフォローするように前へからだをたおせ」といわれたという。このゲームでスライダーは四つ投げただけ。「ピンチのときだけ使ったが、多摩川でスライダーを投げていなかったので、思い切って投げられなかった」というが、このスライダーこそ大熊の秘密兵器なのだ。大熊は高橋と仲がいい。高橋のニックネームはクマ。藤田コーチが、ふたりがいつもいっしょにいるのでクマさんハッツァンのようだということからついたアダ名。このクマのウイニングショットはスライダー。「クマ、スライダーがいいぜ。こいつがうまくきまったらぜったい打たれん」ハチにいわれてクマはけんめいにこの秘球をマスターしようとした。だが、藤田コーチになってからは、基本から組み立てなおすことに重点がおかれた。せっかくおぼえたスライダーは練習では投げるひまはなかった。そのかわり、速球にノビがでたのだ。1㍍81の長身、左足から大きくあげて、投げおろされると、バッターは威圧感をおぼえる。藤田コーチは「小さくまとめるより大きくのばす」という指導方針で大熊をコーチしている。それがようやく芽をだしてきたようだ。この遠征には藤田コーチはきていないが、同行の堀内コーチは「いいところへきめたタマは四割くらい。まだ安心できない。しかし、大熊あたりがのびてくれれば、このプラスは非常に大きい」と期待していた。おそらくこれからのオープン戦でドシドシ使われるだろうが、器が大きいだけに首脳部の期待も大きいにちがいない。藤田コーチの手でどこまで伸びるか、楽しみだ。