元大洋の近藤和彦選手を知ってますか? 1966年 逆転とダメ押しの2ラン。これを半分いねむりしながら? 打った。「ダメだね。デー・ゲームってヤツは。すっかりナイター用になってしまったからだが、どうしてもうまく動かないんだ。試合は終わったけど、オレの目はまださめてないよ」大洋の宿舎は下関からまたバスで一時間近くかかる川棚温泉にある。当然それだけ球場への出発も早くなり、いつまでもフトンにしがみついている選手はたたき起こされることになる。この日のヒーローの口から真っ先にとび出した言葉が「眠たいよ」というのもうなずける。しかし、これはテレ屋の近藤和らしい冗談。ホームランはねらって打ったと、はっきりいった。「一本目は内角高めのまっすぐ。とにかく引っぱってやろうと思い切り振ったんだ。二本目はもっとねらったね。低めのボールだったが案外とんではいっちゃった」八回のダメ押し2ランはたしかにストライクではなかった。捕手の久保があきれたように目を丸くしていたのがなによりの証拠。珍しく強引な近藤和の勝利だった。しかし、六回の逆転ホームランは捕手の田中とちょっとしたかけひきがあったそうだ。右翼へ引っぱろうとしているのをみぬいた田中が「右翼へ打つんだね」ときいたとき、近藤和は「打たせてどっちへとぶかしらべてみろよ」といいながら「これは内角へ投げてファウルか、つまった当たりにとる気だな」と敵の手をよみかえしたそうだ。さる十日の阪神戦(川崎)ではタイムがかかった直後に左翼の金網に当る流し打ち。サヨナラ・ホームランの大殊勲をわずかな差で逃がしている。「きょうはそのウップンばらし?」ときかれると「あのときはあのとき。もうすっかり忘れてしまったね」とサバサバした口調でいった。過去八シーズンでベスト・テンに六度もはいっているがちょっと意外なことが二つある。それは広島戦で案外打っていないことと、ホームランが毎年ひとケタ(昨年は九本)であることだ。だが、ことしはホームランもすでに四本、それも全部広島戦でとばした。打率も広島戦はこれまでは八試合で四十打数十二安打(四割)だ。「ことしは全チームからかせがしてもらってひと旗あげにゃ」と笑う近藤和は、明るい日ざしがまぶしそうだった。