元広島の千葉剛投手を知ってますか? 1970年 新人投手のデビューは神経を使うものだ。それが千葉の場合、首脳陣はごく当たり前に第一戦登録を決めた。「仕上がりも順調だし、それよりも一試合でも多く場数を踏ませて、投げること以外のことも身につけさせたいからだ。彼はたとえめった打ちされても、それでショックを受けたり自信をなくしたりすることはないからね」(関根コーチ)首脳陣の胸の内にはなんの心配もなかった。「自分としては打たれて当たり前、紅白試合だと思って投げた。まずまずのピッチングではなかったでしょうか。でも2ストライクから辻さんに打たれたときはさすがにプロだと思いましたね」というのが初登板の印象。この一週間のキャンプでの千葉の評判はまあまあだった。ブルペンではギクシャクしたフォームで「即戦力など到底無理な話だ」という声。シート・バッティングに登板すると、ほとんどの打者が伸びてくる速球につまって凡退する。「やっぱり見どころがある」という極端な二つの見方があった。しかし試合旧式のシート・バッティングに登板するごとに信頼され「実戦に強いピッチャー」(山内)を実証していった。この日の先発については「シート・バッティングで一番多く(四試合)投げており、仕上がりも早いのでぼくが投げるのではないかと思っていた」という。それどころか、備前コーチがいうには「いま試合に投げられる状態なのはぼく以外にないのではないでしょうか」とそれとなく売り込んでいたという。顔色一つ変えないポーカー・フェースはなかなかの心臓男。東北人特有のねばり強さも持っている。勝負球のシュートを投げず、ストレートとカーブで攻めた。マークした永淵には一打席目(一ゴロ)内角、二打席目(中飛)真ん中高めの、いずれも伸びのいいストレートで押した。「一見なんでもないような球が手元でグーンと伸びてくるので打ちにくい。それに新人とは思えない勝負度胸を持っているのではないかな」と永淵。河村英文氏は「ナチュラル気味のシュートがあったが、あれは威力がある。しかしフォームにしなりがなく、ガクッと折れてくるような感じだ。とくにバック・スイングからからだが移動してくるときは、なめらかさがなく、カーブを投げるときなどかつぎ気味で、すぐわかる。球の威力はあるがこれからフォームに手を入れていかなければいけないだろう。時間的にはまだまだかかるのではないか」という。関根ヘッド・コーチも「フォームはこれからだ」というが、いまのフォームでも十分にいける見通しをつけているだけに、いつごろ手を加えるか迷っている。アッという間に終わったキャンプ。千葉にとって初めてのキャンプで戸惑い気味のところもあったが「彼ほど練習をうまくこなしていたものもいなかった」と根本監督は要領のよさに感心していた。チーム一の仕上がりと実戦に強いピッチングは、即戦力の期待を徐々に固めつつある。オープン戦では最多登板の予定が組まれている。