もちろんです。
ジャガーにとっては事業の規模を拡大するための野心的なモデルでした。
確か新たに工場も新設したはずです。
折しもローバー・カーズが解体され、プジョー(タルボット)が英国での生産から撤退する流れの中で、企業としての社会的な責任を果たす=雇用を確保すると同時にシェアを拡大する機会でもありました。
ただ、世の中の流れがセダンからSUVに傾いていることを読み切れなかっただけです。
モンデオが「つまらない車」だとは思いません。
むしろ、当時のヨーロッパ車の中でも非常にまっとうな、健康的な成り立ちの車だと思います。
しかもヨーロッパ・フォードの例に漏れず、ジャッキー・スチュワート率いるテスト部隊が徹底した走り込みでハンドリングを鍛えていました。
プレミアム・スポーツセダンのベース車としては当時最高の一台だったと思います。
それに、往年のスポーツカーブランドを冠する車が量産FWD車をベースにするのが悪いと言うのなら、90年代以来のアルファロメオはどうなるのでしょう?アルファロメオはうまくブランドを生かして成功しています。
それにジャガーは元々、オースチンやモーリスなどの大衆車をドレスアップするボディキットの発売からスタートした会社です。
言うなればビュートの光岡自動車みたいなものだったわけです。
XタイプはEタイプのようなスポーツカーよりも、ずっとジャガーの本質を突いた車だったと言えます。
日本でXタイプの評判が必要以上に悪い理由は、カーグラフィックなどの雑誌や、セゾングループ時代のジャガー・ジャパンの広告展開などにより、前時代的な「(旧き佳き)英国車」のイメージが刷り込まれてしまっているからだと思います。
海外ではそういう路線ははっきり言って古い、カビ臭いと思われていて、XFや新しいXJで思い切ったデザインの若返りを図って(日本での支持を失うのと引き換えに)人気の復活を果たしています。
現在の目で見ると、Xタイプはそこに至るまでの過渡期の試みだったと思います。
また、日本でジャガーはメルセデスやBMWに匹敵するクラスだと認識されていますが、少なくとも当時(~90年代)のジャガーの海外での価格帯はそれらよりもワンランク下でした。
むしろローバーの方がブランドとしては格上で、初代レジェンドベースのローバー800の方がジャガーXJのベースモデルよりも高価だったのです。
日本での価格設定があべこべだっただけで。
だから、フォード傘下でモンデオをベースに新型車を作っても別におかしくはなかったんですよ。
質問者さんはそういう拡大路線自体がジャガーの意図だったのかを訊いておられるんだと思いますが、そういうブランドとしての微妙な位置付けもあって、それまでのロールスロイス/ベントレーやアストンマーチンよりは大きく、フォードやボクスホール、ローバーといった大手メーカーよりは小さい、はっきり言って非常に中途半端な規模で経営を続けるのは厳しくなっていたはず。
もっとまとまった数が売れる車を必要としていたんです。
だからこそフォードとの提携にも至ったんでしょう。
リストラで経営規模を小さくするのは、伴う犠牲があらゆる面で大きすぎますからね。