元大洋の淵上澄雄投手を知ってますか? 1965年 日本高校野球連盟に加盟している学校が全国で千二百校、一校の野球部員二十五人として高校球児は三万人。だから淵上クンは三万分の一という確率の低い幸運を引き当てたことになる。選手宣誓はチームメイトとともに味わえる優勝の感激と違って、ただひとり自分だけでかみしめる貴重な経験なのだ。二十六日の予行演習。各校主将の持つ選抜旗を背にした淵上クンは、右手を高らかに上げ、落ち着いた口調で堂々とやった。「昨秋から一生懸命やろうと考えていました。だがやっぱりあがりました。でもあすはゆっくり大きな声で専制します」淵上クンはチームの大黒柱である。エース、三番打者、主将ー。だがチームが期待するのは投手としての彼だ。外角低めへの重い速球が武器で、変化球もカーブ、シュート、ドロップ、ナックルとなんでもこなす。昨年はじめ相ついで左足アキレスケン、右ヒジを痛めて味わった。苦しみがピッチングをひと回り大きく、人間的にも成長させたようだ。浅井部長は「ピッチングに波のないのがいいし、野手がエラーしてもイヤな顔をせずチームから信頼されている」という。淵上クンは二十二日甲子園入りしてから一日百五十ー二百球のピッチングをしている。本人は「七分から八分のできです」とけんそんするが、スピードは昨秋より一段と増したようだ。ネット裏は参加二十四校中でもAクラスにはりる右腕と淵上クンを評価している。甲子園のマウンドも気に入ったそうだ。「開会式直後で選抜旗を持ち、宣誓をするので人一倍疲れるでしょうが、悔いのない試合をしたいと思います」と口びるをかみしめた。きょうの試合には岐阜県吉城郡国府町の淵上後援会の人たちが母親のよ志さん(45)とともにバス三台で応援にやって来る。淵上クンは後援会の人たちの期待にこたえて好投してくれるだろう。国府町広瀬、公務員よ志さんの長男、1㍍80、75㌔。工業課程三年生。