匿名さん
元中日の早川実投手を知ってますか? 1976年 私は早くからドラゴンズ優勝説を唱えてきたが、十、十一日と二日つづきの大逆転ドラマを見て、その意をさらに強くした。
ことし優勝したら、三年といわず五年以上、ドラゴンズの天下が続くと予言してもよい。
十一日の試合直後、ホエールズの近藤昭仁コーチは、ドラゴンズの塚田直和ランニングコーチと球場の廊下でばったり顔を合わせると、思わず「まるでもう悪夢ですよ」ともらしたという。
敵に弱音を吐くとはー。
鯨たちの集団憂うつ症が目に見えるようではないか。
「悪夢ですよ」の一言に、私はホエールズのドラゴンズ恐怖症の芽生えを見る。
カモを多くつくることが優勝の第一条件なのだが、近藤昭仁コーチの一事はカモの嘆きとみていいのではないか。
この逆転の福夢に狂喜乱舞する竜たちの中で、最高のラッキーボーイはルーキーの早川実だ。
十日、わずか19球で初勝利をつかんだとき、彼は「この喜びをさっそく坊主に知らせます」と言った。
彼は昨年暮れ、くしくも入団発表直後に生まれた功君がいる。
まだ口もきけない赤ちゃんだが、早川はそれほどうれしかったのだろう。
彼の喜色満面の顔を見て、私は小川健太郎たちを思い出した。
彼も高岡英司も、そして三年前、谷木恭平がドラゴンズのユニホームを着たときは子連れ新人であった。
また名古屋は、中利夫、高木守道、江藤省三など三十を過ぎて選手がよく育つ土壌だ。
早川にもその土は合うはずである。
ド心臓の持ち主だし、ほがらかな男だ。
ファームの若手投手の面倒をよく見ており、彼らからも「ムーミン」というニックネームをたてまつられていると聞いた。
新人を育てることのうまい近藤貞雄ヘッドコーチ門下に入った幸せ者だが、私は彼にことしのドラゴンズの道を見た思いだ。
彼がドラゴンズの幸運派の筆頭なら、ドラゴンズ快進撃の軸は星野仙一だと見る。
早川投手の話 みんなからツキ男だと言われますが、結果的に見て勝ち星が転がり込んで来ただけ。
プロ入り初登板の初勝利なんてラッキー以外の何ものでもないですよ。
これまでも野球では、ここという場面でツイているな、と思ったことは何度かある。
野球以外では別にない。
せいぜい十年近く前。
自動車の運転免許を取り立てのころ、ミゾに突っ込んだり、横っ腹に衝突されても、ケガ一つしなかったことはありますがー。
ピッチングは、ストレートの伸びがもう一つない。
でも1イニングぐらいの救援は変化球で勝負した方が無難だと思った。
これからも首脳陣の要求に応じ、ワンポイント救援でも全力を尽くしたい。
もし、打者ひと回り投げられたらというのが、いまのボクの夢です。