お疲れ様です。
ミスター高圧ガスと申します。
水素の製造方法、製造コストについての議論が中心ですが、水素を都市ガスのように導管で供給して使用できる環境であれば、エネルギー密度の低い水素でも一つの方法として「あり」かもしれませんが、こと自動車の燃料として自動車に積載して使用するとなると、エネルギー密度の低い水素は致命的です。
水素を液化して積載すればいいのですが、水素の沸点は-253℃であるので、この状態を自動車で保とうとすると現在の技術レベルでは、この温度を維持できる保温性の高い素材、輻射熱を遮断できる素材が要求されますが、皆無と考えていいでしょう。
ロケットの燃料として液体水素が使用されていますが、上記の問題を解決できないので、ロケットに液体水素を搭載するのは、ロケットの打ち上げの少し前です。
天候が悪くて打ち上げが延期となれば、ロケットから再度液体水素を戻しているくらいですので、一般人が取り扱う自動車に液体水素を燃料として搭載するのは、現在の技術レベルでは困難と考えるべきでしょう。
MIRAIを始め水素を燃料として走る燃料電池車(試作車を含む。
)は、水素を圧縮して充填しています。
航続距離を出すために圧力を70MPa、将来的には90MPa近くまで加圧して充填することになるでしょう。
90MPaというとピンとこないかもしれませんが、海底約9,000mの深海とほぼ同じ圧力です。
この圧力にするために、自動車の燃料タンクに水素をギュウギュウ詰めに押し込んでいるわけです。
この作業をしているのがいわゆる水素ステーションです。
水素ステーションについては、インフラのコストとして1か所当たり4~5億円かかっています。
ガソリンスタンドが1か所当たり1億円程度といわれていますので、建設コストが異常に高いことがネックになります。
高くなる原因は、水素の脆化対策です。
水素については、分子が小さく圧力が高まれば高まるほど金属材料の中に侵入し、材料中の炭素分と結合し、金属材料中にメタンを発生させ、金属の割れを誘い材料を劣化させる特性があります。
そのため、水素ステーションにおいて、圧縮水素の通る部分について使用できる材料が、高圧ガス保安法において制限がかかっています。
ニッケルをふんだんに使用した材料ですので、材料コストが著しく高くなっています。
また、この水素を圧縮するための圧縮機も、90MPaまで昇圧しようとすると非常に大きな動力が必要です。
低圧側圧縮機、高圧ガス圧縮機と2段階で圧縮しているところがほとんどですが、使用されているモータも100kWの動力を要するもので非常に電力を消費します。
水素を充填するために非常に大きな消費電力が必要となるという話はほとんどされていませんが、今の技術レベルではまだこの程度のことしか出来ません。
水素を製造するコストが下がっても、水素を自動車に充填するコストについては当分下がる見込みがないかなといったところです。
「水素社会」とかいって、水素を簡単に取り扱えるような社会がすぐ近くまできているような錯覚を起こす言葉でいろんな人が煽動していますが、課題のハードルも高く、私の中では水素社会など実現できないと考えています。