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トヨタ・ハイラックス
トヨタ・ハイラックス (Hilux) は、トヨタ自動車が製造・販売しているピックアップトラックである。
平成29年以降、日本国内で新車として販売されている唯一のピックアップトラックである。
1968年にトヨペット・ライトスタウトや日野・ブリスカの後継として登場。6代目は日本のメーカーが日本向けに生産販売したピックアップトラックで、ハイラックスサーフのベース車にもなった。7代目からは日本での販売を一旦止め、世界戦略車「IMVシリーズ」のピックアップトラック車種にハイラックスの車名を引き継ぎ、タイ、アルゼンチン、南アフリカを生産拠点として、世界の新興国市場に向けて販売されている。過去にはフォルクスワーゲンに『タロ』としてOEM供給していたこともある。2017年には旧型ハイラックスの愛用者の熱望により、13年ぶりに日本国内市場に復活した。
日本では馴染みは少ないが、世界では高い信頼性が人気を集め、現在カローラの次に最も売れているトヨタ車である。脱硫装置の普及していない発展途上国では、硫黄の多く含まれる劣悪な燃料にも耐えられるよう、また砂漠の真ん中でエンジンが壊れても修理できるように、最新のコモンレール式ではなく旧型のメカポンプ式のエンジンもラインナップしている。
北米では1985年の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公マーティーの憧れの車として、漆黒のハイラックス4x4 SR5 Xtra Cab(4代目)が登場するなどマニアに人気があったが、1995年モデルを最後に販売を終えており、代わりに外装・内装・機能を北米市場の嗜好に合わせて開発したタコマをラインナップしている。
トヨタIMVプロジェクトのフレーム構造をベースとした単一プラットフォームを共有する世界戦略車「IMVシリーズ」としてピックアップトラック、SUV、ミニバンが設定され、このピックアップトラック車種がハイラックス7代目を継承した。「IMVシリーズ」はパワーと低価格が重視される地域向けに、トラックを乗用としても使用する購買層に対し、従来のトラックに比べ乗用車風の高級感を持たせるつくりとし、さらにトヨタの安定した品質を提供することで販売増を狙うという、新興国向け世界戦略車として生み出されている。世界中の多くの国で販売されるが、日本やタコマが販売される北米には導入されない。
7代目のタイ仕様車には「ヴィーゴ」 (Vigo) のサブネームが与えられた。また、南太平洋地域では「ハイラックスIMV」の車名で販売されている。
生産はまずタイで開始された。日野自動車羽村工場のラインが一部移管され2004年8月から行われた。羽村工場でも2005年6月末まで生産されていたが、IMVは日本国外以外の世界的規模でトヨタ生産方式を実現することが求められるプロジェクトであり、最終的にタイに完全に移管された。
一国生産のリスクを避けるためにタイ以外でも順次生産が開始され、アルゼンチン(2005年2月)、南アフリカ(2005年4月)の3ヶ国がIMVシリーズピックアップ車の主要な輸出拠点となっている。この3拠点から世界の新興諸国に向け輸出されるほか、マレーシアやパキスタン、ベネズエラなどでは自国向けにCKD生産されている。
エンジンは直列4気筒DOHC 2.7 Lガソリンの2TR-FE、V型6気筒のDOHC 4.0 Lガソリンの1GR-FE、直列4気筒DOHCディーゼルは3.0 Lの1KD-FTV、2.5 Lの2KD-FTVが設定されている。
日本の代表的なキャンピングカービルダーであるバンテック社はHILUX VIGOをベース車としたテラ (Terra) を2006年から販売している。トヨタタイ工場から仕入れたHILUX VIGOをバンテック社タイ工場で架装。ベース車としてのHILUX VIGOは並行輸入扱いとなっている。
2011年7月1日、大幅なフェイスリフトを受けた新型ハイラックスがメルボルンモーターショーに出展され
、13日にタイで新型フォーチュナーとともに正式に発表・発売開始された。欧州向けは10月にイギリスで発売が開始される。
2015年5月21日、タイ王国バンコクおよびオーストラリアで発表し、同日タイ国内で発売を開始した。オーストラリアでは10月から発売開始となる。8代目のタイ仕様車には「レボ」(Revo) のサブネームが付加されている。なお、タイでは先代のヴィーゴも並行して継続販売される。
「道が人を鍛える。人がクルマをつくる」という考えのもと、開発チームが世界中の様々な道を走り、使用環境を実際に体験して開発された。フレームサイドレールの断面を拡大した新開発のフレームが採用され、安全性と耐久性を大幅に向上させた。後軸のサスペンョンはリーフスプリングであるが、前軸にはダブルウィッシュボーンを採用。サスペンションの仕様は、スタンダード(標準)仕様、高積載に対応するヘビーデューティー仕様、積載性を保ちつつ乗用車並みの乗り心地を実現したコンフォート仕様の3種類が設定される。
エンジンはディーゼルが新開発のGDエンジンファミリー(2.4L、2.8L)となる。ガソリンは従来の2TR-FE型 直4 2.7Lと1GR-FE型 4.0L V6 ガソリン(オセアニア向け)が引き続き採用される。また、オートマチックトランスミッションは新開発の6速ATが採用されている。
トランスファーは、サイレントチェーン+ギアを用いた方式のものが採用されており、2H・4H選択時には1.000、4L選択時には2.566のギア比となる。
キャビンは5人乗りのダブルキャブ、2人乗りのシングルキャブ、シングルを若干延長して荷物置き場を設けたエクストラキャブの3つが組み合わされる。また、8代目ではLEDヘッドランプや本革シート、防犯対策として要望の大きいオートドアロックなど最新の装備が数多く盛り込まれ、エクステリアにおいても大幅な質的向上を果たしている。
2018年11月にはGR SPORTが南米で発売され、ダカール・ラリーで初の総合優勝を飾った後の2019年7月からは南アフリカでも展開されるようになった。
2017年9月12日に8代目の日本仕様が発売された。日本市場への導入は13年ぶりとなるとともに、タイから日本に輸入される初のトヨタ車となった。なお、製造事業者及び、車検証の車名が「Toyota Motor Thailand」であるため、正式車名は「トヨタ・ハイラックス」ではなく、『TMTハイラックス』である。
日本市場未導入となった先代7代目は、グローバル市場を見据えてボディサイズを大型化していたため、続く現行8代目も全長が5,335mm、全幅1,855mmとなり、全車が1ナンバー登録となる。なお、日本市場向けのボディタイプは、4ドアの「ダブルキャブ」のみの設定。
エンジンは、国内初導入となる直列4気筒2.4Lディーゼルターボ2GD-FTV型を搭載。最高出力/最大トルクは、150PS(110kW)/3,400rpm、40.8kgf・m(400N・m)/1,600~2,000rpmを発生する。DPR(排出ガス浄化装置)や尿素SCRシステムなどの採用により、排出ガスをクリーン化。ポスト新長期規制をクリア、同時に「平成21年基準排出ガス10%低減レベル(低排出ガス車)」の認定を取得、「平成27年度燃費基準+15%」を達成している。2020年8月のマイナーチェンジでWLTCモードによる平成30年排出ガス規制に適合した(低排出ガス車のステッカーはなくなるものの、「平成27年度燃費基準+15%」達成ステッカーは引き続き装着される)。
トランミッションは、スーパーインテリジェント6速オートマチック(6 Super ECT)にシーケンシャルシフトマチックを採用している。
サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン式コイルスプリング、リヤは車軸式半楕円リーフスプリングを採用。ダイヤル操作で駆動方式を選択できる「パートタイム4WDシステム」を装備。また、ヒルスタートアシストコントロール(HAC)やアクティブトラクションコントロール(Zのみ)、ダウンヒルアシストコントロール(DAC)制御(Zのみ)を設定することで、様々な路面状況に応じて駆動力を制御。オンロードからオフロードまで高い走行性能を実現している。
日本復活の経緯としては、2004年の6代目の国内販売終了後、主に北海道のディーラーで仕事にハイラックスを用いる顧客からの代替車の要望が相次いでいたことがある。しかし同じく普通車サイズとなったタイ製三菱・トライトンの販売台数が6年間で1,800台という大失敗に終わっていたこともあり、トヨタは輸入に極めて慎重な姿勢を取りながら日本の法律への適合手続きを進め、10年近くをかけながら実現させた。本来採算の取れない可能性もあるところ、やむなく掲げた2,000台の年間目標に対し、販売初月で2,300台の受注が得られた。なおベースグレードでもダブルキャブ+クリーンディーゼル+4WDで高額となるため、実際には仕事用の乗り換え需要は極めて少なく、初期の受注では富裕な20〜30代の男性ユーザーがレジャー用に購入することがほとんどで、特に20代は6割を占めたという。
BBCの自動車番組トップ・ギアで、ハイラックスの耐久実験が行われたことがある。この企画は放送時点の13年前に生産された4代目ハイラックスのイギリス向け仕様車両を30万km走行した中古で購入し、初めに階段を下らせ木に衝突させた後、海中に車体を5時間沈め、解体用の鉄球で衝撃を与え、小屋に体当たりさせ、高層建築物の屋上にハイラックスを置き爆破解体工事を行うなど、かなり手荒な方法で破壊が試みられたが、車は基本的な工具のみで修理をしただけで、自走してスタジオに到着した。そのハイラックスは2017年からイングランドハンプシャー州ビューリー国立自動車博物館のWorld of Top Gearエリアで展示されている。
このハイラックスは、司会のジェレミー・クラークソンの提案で、以後収録スタジオに展示されることとなった。またSeries08 Episode3の別の企画では水陸両用車「」のベースに使用。また、7代目ハイラックスをベースにした改造車で北磁極に到達した。
さらに、このチャレンジで使用された撮影クルー用の車両が、ジェームズ・メイがエイヤフィヤトラヨークトル氷河の火山に接近するチャレンジにも使用された。構造は基本仕様だが、飛んでくる高熱の噴石から車体を守るためルーフ上にトタン板を載せ、タイヤが熱で溶けないように冷却水をタイヤに落とす装置を追加している。これは、エイヤフィヤトラヨークトルの噴火を起こす前のロケで、番組中でも噴火によりヨーロッパの航空網に多大な影響を及ぼしたことがSeries15 Episode1で触れられた。また、この時の写真はトヨタ自動車のプレゼンテーション資料にも使われている。
以上のように耐久力や汎用性について評価は高いが、ジェレミーは自身の自動車コラム記事「」において、近年のハイラックスやランドクルーザーが開発および製造費用の削減や軽量化(燃料価格高騰への対策)および過剰な電子装備によって、耐久力に疑問符が付いていることを指摘している。他にも、北極撮影のため車体改造を担当した現地業者の話として、かつてはほぼ無改造で極地の走行ができたが、現行モデルでは多数の補強が必要になっているという。
トップ・ギアの過酷なテストが示すように、ハイラックスは高い耐久力を誇るワールドカーであり、ランドクルーザーと共に、国際連合機関やNGOが過酷な環境下での支援活動に使用している。
しかし耐久性を有しながら民生品として販売されているため、中東・アフリカで武装勢力のテクニカルにされることが一般的になっている。また政府軍に対して欧米が提供した車両が鹵獲・流出するパターンも多い。この状態は初代ハイラックスが登場した頃から続いているため、部品の流通ルートが確立している上、整備ノウハウも蓄積されており、中東の紛争が続く限りトヨタ車が武装勢力に愛用されるという事態も当面続くと見られる。
このためドバイなどでは国連機関であっても防弾車として改造したハイラックスやランドクルーザーの国外搬出に制限をかけている。
2012年から南アフリカトヨタ(TSAM)がラリーレイド用の『ハイラックス EVO』を開発し、ベルギーのオーバードライブ・レーシングのオペレーションでラリーレイドに参戦している。チーム名はTOYOTA GAZOO Racing SA(TGRSA)であったが、2020年からSAが取れてワークス体制であることが明確にされた。ダカールではオーバードライブ・レーシングもGAZOO Racingとは別に、独自にハイラックスを参戦させている他、同マシンのプライベーターチームへの販売も請け負っている。なお2017年には後輪駆動モデルも開発したが、投入直前でお蔵入りとなっている。
TGRSAはダカール・ラリーで幾度もの表彰台を獲得した後、参戦8年目でハイラックス生誕50周年の2019年にナッサー・アル=アティヤが、二駆・四駆合わせて8台体制を敷いてきたMiniのワークス勢を破り、トヨタ史上初の総合優勝を達成した。またダカールに並行してFIAクロスカントリーラリー・ワールドカップにも参戦、こちらもアル=アティヤが2016年と2017年に連覇している。2020年のダカールではF1王者のフェルナンド・アロンソもTGRの一員として参戦し、ステージ2位を獲得するなど話題を呼んだ。
アジアクロスカントリーラリーでは日本とタイのTRDが協力して、タイ製ハイラックスをベースに「ハイラックスREVO」を開発しワークス参戦している他、プライベーターにも供給されている。
この他タイのTOYOTA GAZOO Racingは、ハイラックスREVOによるワンメイクのサーキットレースも開催している。
「High」と「Luxury」を合成した造語で、乗用車なみの豪華さを持ったピックアップトラックを目指したという意味であり、動物のハイラックスとは関係が無い。
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