匿名さん
元阪急の中田昌宏選手を知ってますか? 1964年 走者を一、二塁において中田が十二回裏一死、打席にはいったとき、時間は連盟規約の廿一時三十分(をすぎたら新しいイニングにはならない)を三十秒オーバーしていた。
山下球団営業部長に三十秒オーバーをきいた岡村が中田につめ寄ってなにか二言三言。
うなずく中田を西本監督もよび寄せた。
「落ちついていけ」それだけだったそうだが、中田のこのひとことでそれまで力のはいっていた肩が急に軽くなったそうだ。
お祭りさわぎの阪急ベンチがしずまり、うす暗い裸電球の下で西本監督と中田が報道陣につかまった。
「時間切れでしょう。
楽に勝てている試合を引き分けてみろよ。
ワシは最初から思いきりたたこうと思った。
初球をひっぱたいたらファウルや。
だがあのファウルでいけるぞという予感がしたな。
打ったのは真ん中にはいってくる速球やったな」一足先にベンチを出る中田を西本監督は呼びよせて握手した。
「近鉄には自信があったからな」思わず二人の口から出た言葉は同じだった。
中田はことし近鉄戦には不思議によく打つ。
これで近鉄からの打点は17。
「別に近鉄だからという気持ちはないんだが・・・。
だれだって好きなチームはあるもんだよ」ゲーム前「とにかく接戦になったら、スペンサー、石井晶の一発と、中田を警戒すればいいんだ。
あいつらには痛い目に合わされているからな」といっていた近鉄・今久留主スコアラーの心配したとおりの結果になった。
「とにかく、相手はどこでもいい。
打てるときに一本でも打っておかなければ、それこそおまんまの食いあげだ。
ウチの外野を見なさいよ。
何人でポジションを争っていると思う。
いくら調子がよくても、きっかけがつかめにゃ、出られないんだ」ことしは外人もはいった。
それに早瀬、衆樹、梁川、石川、山本と息を抜くヒマもない。
「ウチが今シーズン優勝を争えるようになったのも、内外野ともこれだけの競争相手ができたからやで」とプロ入り八年目で初めてハッスルしている。
昨年の秋季練習からこれまでのゴルフ・スイングを水平打法にかえた。
西本監督は「とにかくまじめだし努力家だ。
もうチームでも古参組に数えられるが、自分でも納得のいくまでフォームの欠点を聞きにくる。
若手に中田のツメのアカでもせんじてのませたいよ」と殊勲打を当然のようにいった。