元大洋の鬼頭洋投手を知ってますか? 1967年 試合前のベンチ。三番手のリリーフに予定されていた森中(前南海)が、ニヤニヤしながら先発の及川と二番目の鬼頭をつかまえて、あつかましいことをいっていた。「センジ(及川)は、にらみのきいた顔で5回はもつし、つぎはメダマ(鬼頭の愛称)でほうるから、きょうはオレの出番はなしヤ。たのんだぜ」-これには二人ともニガ笑いするばかり。森中の自分勝手な予想?は、回数が逆に出たが、鬼頭は5イニングを全力で飛ばした。打者十七人にヒット1、三振1、四球2、失点0。首脳陣が「今シーズンはぜひとも左の先発に育てたい」という期待にこたえた力投だった。だが、立ち上がりは速球が上へ浮いてボールを連発。これには大洋ベンチもハラハラのしどおし。「風があったから、風を利用してビュンビュンいってやろうとしたのが失敗でした。ついリキんじゃって・・・」代わったばかりの五回はこのため白、青野ら打者四人に23球も投げてヒヤ汗をかいた。しかし、秋山コーチから「バックスイングに力がはいりすぎるとるゾ。もっと軽くいけ」と注意されてから、とたんに本来のピッチングにかえった。六回からの投球数は6球、10球、20球、5球。ノビのいいスピードボールを低めへ集めてやっと落ちついた。「十九日の紅白戦(四回で被安打1)のときよりボールはおそかったと思うんです。でも七回ごろからやっと自分のピッチングができました。最初からストレートで押すつもりでしたから、直球とカーブの割り合いは7-3ぐらい。フォークも投げましたがスッポ抜けが1球だけ」特徴のある大きな目をうれしそうにクルクル動かした。名古屋商大を中退して、ことしでプロ入り三年目。過去、痛めたことのない左腕と、タテ21㌢もある大きな手を持ちながら、昨年まではもっぱらイースタン専門。一軍では昨秋の巨人とのオープン戦(銚子)で貴重な1勝があるだけ。毎シーズン「ことしこそは」といわれながらキャンプ男に甘んじていた鬼頭だった。しかし、今シーズンはちょっとばかりの中身が違ってきたようだ。「一番ダメだったコントロールに自信が持てるし、シュートもよく切れる。ことしはボク自身なにかやれそうな気がするんです」と鬼頭はいっている。こんごの一番大きな問題は、リキみながらボールを連発して自滅しないことだろう。昨年までのこの欠点さえなくなればタマそのものは、とにかくすばらしいものを持っている。切れのいい速球とカーブ、シュート。それに急角度に沈むフォークボールで左の一番手にのし上がれる可能性はじゅうぶんだ。秋山コーチはいう。「きょうはシリ上がりによくなってきたが、まだまだ、リキむ一方でいい点はやれない。しかし、ことしはなんとか先発でノビてほしいんだ。三年目のことし、精いっぱいやってダメなら、あきらめろと鬼頭にはいってある」それはともかく小野、平岡ら左投手が力不足の大洋には鬼頭のこれからの成長ぶりが楽しみだ。