元阪神のバッキー投手を知ってますか? 1967年 ネット裏、投手のタマがいちばんよくわかるところに巨人の高橋スコアラーがいた。バッキーの調整ぐあいを調べるために急ぎ、東京からやってきたという。コートのポケットから分厚いノートを取りだし、投球内容を分析する。「バッキーは昨年ウチに1勝6敗。もっか6連敗中だが、ことしはスリークォーターからオーバースローにフォームをかえたというので警戒している。やりそうだネ。スピードが違う」高橋スコアラーはバッキーの状態を国際電話でベロビーチにいる川上監督に報告するそうだ。「巨人がワタシのピッチングを調べにきているというニュースは知っていたが気にしない。ボクサーが公開練習をするようにワタシも公開ピッチングをしただけ。自分では順調に調整ができつつあるように思ったのだが、巨人のスパイはどうみただろうかな。ひとつ意見を聞こうか」バッキーは、巨人のスパイ網など問題にしていない。そんなことよりも、昨年、巨人にこっぴどく打ち込まれながらも、いまなおマークされていることをよろこんだ。「どうだ。まだ巨人がワタシをつけねらっている。きょうのピッチングがよかったので、ちょっとびっくりしたのと違うかな。だが、こんなものじゃあないよ。これから直球にスピードを増していく。まあ、オープン戦はじめてのテストピッチングとしたら合格だ」大きなゼスチャアをまじえて自分のピッチングをベタほめする。投球数は42球。スリークォーターから投げたのはスライダー4球だけだった。あとのフォームはすべてオーバースロー。左足を高くあげて投球態勢にはいる。昨年とはかなり違ったフォームだ。「左足を高くあげればステップは自然に大きくなり、ダイナミックなフォームになる。そうすればスピードはでてくる。また、左足を高くあげたとき、ヒップを打者に向けるぐらい腰をまわせば、さらにスピードを増すはずだ。米田のピッチングをみてそう思った」ベンチにいるとき、米田のピッチングをくいいるようにみつめたのも米田の長所をとりいれるためだった。「インサイド、アウトサイドにタマをきめるよう心がけた。だからコントロールはよかっただろう。とくにオーバースローのドロップはよかったはずだ。ニガ手の打者にはこのタマでストライクをとりにいく。ドロップのテストは上々だった」オープン戦初登板で阪急打線を実験台にしたバッキー。長池にホームランを打たれたが、それは実験台にした阪急打線へのサービスのつもりだったそうだ。