匿名さん
元ヤクルトの渡辺孝博投手を知ってますか? 1968年 「社会人の藤原(鐘紡)岡田(松下電器)大学の星野(明大)高校の池田(平安)島野(武相)あたりが実力、人気からみたことしのAクラス投手。渡辺はそのつぎのクラスだろう」(中日・田村スカウト)と評価されているが、ドラフト会議では投手株が人気を呼ぶだけに、10勝以下のクジを引いて第一志望投手を他球団にさらわれた球団が渡辺を指名する可能性が強い。しかし、プロ入りへの障害をこれほど多くかかえた選手もいないだろう。普通の人より白血球が少ない貧血性体質。増血剤を常用しているが、長いシーズンをのりきるスタミナの不安がつきまとう。高校二年、大学二年と三年おきに大きな貧血に見舞われた。もっとも、これは「成長期におこりがちなアンバランスで、こんごはそんなに心配しなくてもよいという医師もいる」(父親・秀二氏)そうだが・・・。渡辺家が身のふり方を一任している東海大・岩田監督は「首都大学リーグ出身のプロ野球選手第一号として送り出したい気持ちは山々だが、からだのことを考えるとシーズンが長く競争の激しいプロの世界はどうしてもするめる気になれない」という。そんなわけで、岩田監督の明大時代の先輩・迫畑正巳氏(元大洋監督)が監督をしている日立製作所への就職は、春の優勝祝賀会に迫畑氏が上京した際「渡辺を頼みます」「喜んで引き受けよう」とスムーズに話し合いができている。東海大の日立への一泊遠征は恒例になっており、今春卒業した大型捕手内田が日立製作所に入社するなど両チームはいわば親類づき合い。日立の投手陣は村井(明大)が峠を越しており、昨年入社が内定した小谷投手(国学大)を大洋にさらわれたいきさつもあるだけに、岩田監督は東海大・松前重義総長(衆議院議員)の了承も得て「渡辺は日立製作所へ就職」の方針をことあるたびに言明し、PRしてきた。メリヤス製造販売の武蔵工業社長の長男で、弟一人と家庭環境にもプロ入りを迫られる材料は見当たらない。渡辺が脚光を浴びたのはことし六月の大学選手権だった。二回戦で第二球場の東海大のゲームを見にゆくスカウトの姿が目立った。ところが、いちばん熱心だった巨人が夏以後に新浦、松原両投手を獲得したうえ「春夏はいいが、秋には調子が落ちる」(渡辺)のを確かめた結果「球威の点でものたりない」(前川スカウト担当)と積極的な動きをやめてしまった。岩田監督を神奈川県相模原市の合宿にたずねて、意向打診をかねてあいさつをした中日・塚越、大洋・入谷両スカウトも「プロ入りさせない事情」をきかされて、その後は表立った動きを控えている。中日は同じ横手投げの小川がいて、指名第一には本格派の星野が有力、山下、木原の同型投手をもつ大洋も、昨年まで岡投手(40年)松岡内野手(41年)小谷投手(42年)とトップに大物をあげたことがなかったが、ことしはオーナー命令で超一流クラスをねらうため「どうしても渡辺を・・・」とマトをしぼれないことも両スカウトの動きにブレーキをかけたようだ。パ・リーグでは優勝チーム阪急が横手、下手投げに弱いこともあって渡辺への関心は高い。神宮大会の対東都戦をみて塚本(東映)城島、渡辺(西鉄)白川(東京)の各スカウトは「すぐに使える」と口をそろえていた。南海・堀井スカウトには東海大野球部三年のオイを通して渡辺の体力面、家庭環境、チーム事情などが耳にはいっているが、同スカウトは「即戦力としてほしい投手。が、あきらめたわけではないがプロ入りしないような感じだ」と悲観的な見方をする。パ・リーグ球団にしても、何がなんでも渡辺というわけではなく「日立入社が決まっている」といううわさをきいて、直接的な活動には二の足をふんでいる段階だ。学校側の打ち出した就職の線が異常に強く、これをくずせるきめ手を持つ球団がいまのところないだけに、指名しても昨年の藤原、三輪田の二の舞となる可能性が強いが「本当の交渉は指名後にするものだ。オーナー総長の頂上会談という手もある」(在京球団・某スカウト)の声があるので、指名球団がどんな政治力を発揮するか、ことしのドラフト戦線でも注目されるケースになりそうだ。1㍍75、68㌔、右投右打、八王子工出、文学部四年。