どんなに金持ち球団であろうと、他球団の選手を自由に引き抜けるわけではありません。
厳密には、FAになった選手を、高額+長期の契約をオファーし、獲得しているだけです。
例えば、今の日本プロ野球においても、金持ち球団である巨人や阪神が、優秀な選手、例えばヤクルトの山田選手を引き抜こうとしても無理です。
それは球団が保有権を持っているからです。
引き抜けるタイミングはFAのときだけ。
あとは、トレードですが、今の山田選手をヤクルトがトレードで出すことはありえないでしょう。
イチロー選手の場合も、マリナーズがトレード等で手放す意志がなかったことに加えて、マリナーズ在籍中は一度もFAになっていません。
ですので、引き抜くタイミングは皆無だったわけです。
MLBでは一般に、FAになるまでに6年間在籍しなければいけません。
松井秀氏の頃から日本人選手は、最初の契約が満了すればFAになることができる特記事項を盛り込むことが慣例化しましたが、野手のパイオニアだったイチロー選手の頃はそういった事項は盛り込めませんでした。
そのため2003年オフに最初の3年契約が満了しましたが、FAになれず、4年契約を結びました。
この4年契約が満了する2007年オフに、イチロー選手はようやくFAになる可能性が浮上しました。
しかし、契約最終年のオールスターにイチロー選手はマリナーズと5年契約を延長しました。
この判断に関しては、結果論としていろいろ言われていますね。
ただこの年のオールスターの時点でマリナーズはリーグ2位ながら、他地区の2位のヤンキース等よりは勝率が上であり、ポストシーズン圏内にいました。
強豪チームに復活しつつあるマリナーズ。
その将来を信じて、さらに5年契約を結んだイチロー選手の判断はあながち誤りだったとはいえないと思います。
2008年~2012年の5年は、勝率5割を超えたのは2009年だけと残念な結果に終わりました。
そしてこの契約の最終年のオールスター直後に、ヤンキースにトレードで〝引き抜かれ”ました。
結局は、ヤンキースという金持ち球団に引き抜かれた形でマリナーズを去ったイチロー選手ですが、全盛期に引き抜かれたわけではなかったので何とも微妙な形でしたが。
イチロー選手が初めてFAとなったのは、ヤンキースででした。
しかし、ヤンキース移籍後の復活、地区優勝への大きな貢献、ポストシーズンでの活躍から、ヤンキースからは40歳となる選手としては破格の2年1,300万ドルのオファーを受けて、ヤンキースと再契約となりました。
イチロー選手ほどの大選手が日米通じて初めてFAとなったのが、39歳のときだった。
何とも珍しいことだったと思います。