その通りです。
普通車に比べてあまりに衝突安全性が異なるので,このような試験になっています。
どんな状況でも安全なクルマはありませんが、できるだけ安全なクルマとはという観点で考えてみましょう。
ここでは、簡単のため、いわゆる完全衝突(エネルギ保存)で大きなクルマと小さなクルマの正面衝突を考えてみましょう。
●大きなクルマ 車重=1500kg ●小さなクルマ 車重=750kg ●ケース1 正面衝突した場合 車速=60km/h(両方) ・衝突後の速度 大きなクルマ=20km/h 小さなクルマ=100km/h (速度方向は、衝突前の逆) ・衝突前後の速度変化 大きなクルマ=80km/h 小さなクルマ=160km/h → 小さなクルマでは、大きな速度変化が起きていることがわかります ●ケース2 大きなクルマが停止し、小さなクルマが走行して大きなクルマに衝突 車速=60km/h(小さなクルマのみ) ・衝突後の速度 大きなクルマ=40km/h 小さなクルマ=20km/h ・衝突前後の速度変化 大きなクルマ=40km/h 小さなクルマ=80km/h → やはり小さなクルマの方が、速度変化が大きい ●ケース3 小さなクルマが停止し、大きなクルマが走行して小さなクルマに衝突 車速=60km/h(大きなクルマのみ) ・衝突後の速度 大きなクルマ=20km/h 小さなクルマ=80km/h ・衝突前後の速度変化 大きなクルマ=40km/h 小さなクルマ=80km/h → 小さなクルマの速度変化が大きい これらから衝突の影響は、小さなクルマ(厳密には、軽いクルマ)の方が大きいことが、おわかりいただけるでしょう。
なお、上記の計算例では、エネルギ保存という仮定をしましたが、通常は、車体形状が変形して、衝突エネルギを吸収します。
この衝突エネルギは、双方のクルマでほぼ同じ程度、負担します(厳密には異なりますが、エネルギ吸収ボディになっているので)。
つまり同じエネルギが入ったときに、吸収できる「余裕」があるかどうかが問題です。
当然、小さなクルマでは、エネルギ吸収のための車体構造に余裕がないでしょう(一般論として)。
これから大きなクルマの方が、安全といえます。
完全な安全というのは存在しません。
より安全な選択しかありません。
もし安全な衝突安全性を求めるなら、できるだけ大きなボディをもつ車両を選ぶのが基本です。
また運転も十分、注意を払い、事故を起こさないだけではなく、もらい事故を受けないようにすることも大切です。
いろいろ考えると、運動性の高い大きなクルマを安全に運転するのが、最良ということになります。
●衝突安全試験のからくり 海外も含めて、多くの衝突安全性試験は、単独衝突です。
車重の異なる車両どうしの衝突例はあまりありません。
しかし実際には、この方が重要です。
このような衝突の時、小さいクルマの方が、破損しやすいことは、国も車両メーカもよく知っています。
このため「コンパティビリティ」といい、大きな車両の吸収エネルギを大きくする技術的な改善をしています。
●車両種類ごとの死者数 添付グラフをご覧ください。
軽自動車は最高速度が低いので,「車両単独」の死者数(右軸)は少なくなっています。
一方,「車両相互」では,車体剛性が低いので,普通車の2倍くらいになります。
簡単ですが、ご参考になれば幸いです。