やっぱり、メルセデス・ベンツやBMWの持つブランドとしての力が圧倒的に違うということではないでしょうか。 アウディ(アウトウニオン)もメルセデスやBMWに劣らぬ歴史があるのですが、アウディ、ホルヒ、ヴァンダラー、DKW、そしてNSUの五社が合併してできた、非常に複雑な歴史を歩んできたメーカーでもあります。中でもホルヒは戦前のドイツを代表する高級車で、BMWの乗用車に比べてもずっとメジャーな存在でした。しかし、戦時中にナチスの高官に愛用されたために、その時代と直結するイメージが付いてしまったことと、工場が旧東ドイツ圏にあったために東ドイツ政府に接収されてしまったので、アウトウニオンはホルヒ(とヴァンダラー)車を作れなくってしまったのです。 今のアウディ車の系譜は戦前からFWDの小型大衆車を作ってきたDKWの流れを汲むものです。だから、本来地味な実用車だったものを高級車として売り出すことにまず矛盾がある。どうやっても、成り上がり的なイメージが拭えない。アウディV8(現在のA8)を発売したときにホルヒのブランドを復活させるアイデアも出たのですが、やはり強い反発があったようで立ち消えになりました。ドイツの人にとって、ホルヒはもう蘇らせてはいけない名前なんですね。それを言ったらメルセデスはどうなんだ、VWはどうなんだということになるのですが、逆にこのふたつは無くすには大き過ぎる名前なんでしょう。 日本でも長年アウディは地味なブランドでした。メルセデスを車検ごとに乗り換える富裕層が、奥さんの買い物用に買う車と言う感じ。それがクアトロでラリーで活躍したり、空力を意識したボディを採用したりして、イメージを変えていきます。それでもヤナセが輸入している間は、メルセデスやVWの影に隠れた存在だったと思います。 今のアウディのイメージが確立されたのはアウディ単独で日本法人を設立してからだと思います。その頃から、お金のかかった一連のコマーシャルでイメージ戦略を進めていった。宣伝のために映画も作りましたしね("トランスポーター")。でも日本の輸入車ユーザーはそれまでのいきさつを見てきましたから、どこか広告のイメージだけで押している印象が拭えない。広告代理店によって"作られた"高級プレミアム車というか。 それでも、昔に比べたら本当にアウディはメジャーになったと思いますよ。こんなに街中がアウディだらけになるとは思わなかった。それでもなおメルセデスやBMWとの差は(特に法人ユーザーの間で)圧倒的だし、ヤナセやBMWの販売網のように、昔からの固定客を抱える老舗ディーラーを持っていないのは痛いですね。 なによりVWの兄弟会社なので、VWとの合算でメルセデスやBMWと比較するのがフェアだと思います。VWも昔と違って高級路線を敷いているし、その上にはベントレーやら何やらがある。アウディ単体の数字だけで考えるのはちょっと違うと思います。VWグループ全体で考えるべき。