元巨人の松本正幸投手を知ってますか? 1974年 ドラフト一、二、三位指名が入団を拒否するという巨人にとって前代未聞のできごと、したがって宮崎キャンプは新しい顔がみられない。「江川か、山下大でも入団してればなあ」首脳陣から声が上がるはずだ。ところで、この松本投手、プロ入り六円目だが、担当記者でも知らぬものが多かった。「バッティング・ピッチャー用?冗談じゃないよ。期待の新戦力だよ」中尾投手コーチが説明した。なるほど、183㌢、73㌔、長身の本格派投手だ。しかも、川上監督、武宮スカウト部長を生んだ第四の名門熊本工の出身。「マスコミのみなさんが顔を知らないのも無理ないと思います。入団早々足、しばらくしてサ骨と骨折が続いて三年間というもの満足にマウンドに上がっていない。もう野球はよそうかと思ったら、武宮さんからカミナリを落とされた」という松本。「好不調の波が多かったぼくが昨年あたりから思い切って投げられるようになった」巨人投手陣は中尾コーチの意向で一月二十日から寒風の多摩川で鍛えられた。お前、宮崎行きかもと木戸コーチにいわれてまさかそのまさかが本当になった。ぼくだって過去五年、うらやましげに一軍行きのメンバーを見送りしましたからね」松本はノーワインドアップ・モーションだ。コントロールをつけるための手段だそうだが、快速球の低めの制球力が目下の課題。「バッティング・ピッチャーやって長島さんや王さんに全力投球する。一軍のキップを手放さぬよう死にものぐるいです」松本、六年目の春である。