元中日の権藤博投手を知ってますか? 1961年 2-0の八回裏、巨人を三社凡退にしりぞけた権藤は、ベンチにもどりながらそばにいたバット・ボーイに「ヒットが打てんね」と話しかけながら打席へ。アウトになってもどってくると「森(巨人)はうそをつきよった。ストレートといったのにカーブを投げよって」とベンチにとび込む。ルーキーながらもうプロには何年もいるといった顔つきだ。プロ入り初勝利を飾ってベンチに帰る途中で報道陣にわっと囲まれ立ち往生。「九回は残念だった。高林に打たれたのは高目にはいったストレート。疲れたわけではありません。まあストレート、ドロップがよくきまったからでしょう。調子はふつうでした。2点とった六回ごろから調子が出てきた」その権藤に濃人監督が「カゼをひかないように火バチのそばにおれ」と気をつかいながら「権藤はふつうの出来ですよ」とすました顔。権藤がしきりにシャットアウトできなかったことを残念がると「シャットアウトは個人記録だぞ。勝てばいい。もう早よう帰ってやすめ」と井上が声をかけた。「いや残って勉強します」といったんロッカーに帰ってマッサージを受けたが「くやしい。落ち着いてみると勝った気がしない」と頭をかきむしりながらまた零封できなかったのを残念がった。実に強気な選手だ。「長島さんに一回に打たれたのは高目。あとは内角のシュート攻めにした。つづけて打たれなかったが、まだ球が高目に浮く。きょうのピッチングは70点。やはりアガりましたよ。途中で監督さんが落ち着くぞとガムをくれました。けさ先発をいわれたのでご飯を二ハイしかたべれなかった」と笑った。三十二年佐賀県鳥栖高卒業後ノンプロRSタイヤに入社。春のオープン戦では4勝無敗。25イニング無失点の好投をみせている。1㍍77、70㌔、右投右打、23歳。背番号20。