なるべく平易に書いてみますが、四輪と二輪では、ロール運動における重心高さと安定性との因果関係が真逆になります。 ●四輪 高重心=ロールしやすい=安定性が低い 低重心=ロールしにくい=安定性が高い ●二輪 高重心=ロールしにくい=安定性が高い 低重心=ロールしやすい=安定性が低い この違いが生まれる理由は、重心点と、最終的にそれを支える点(タイヤの接地面)の数と配置です。 前後方向から見た場合、四輪はそれらの位置関係が三角形になるのに対し、二輪は直線、つまりただの”棒”に過ぎません。 三角の物体は放っておいても倒れない上に背が低いほど安定するのは当然ですが、すぐにでも倒れてしまいそうな棒を少しでも安定させるにはどうすればよいのでしょうか。 その答えが「棒を長く伸ばして重心を高くする」であることを、理屈抜きに経験から分かる方は少なくないはずです。(子供の頃、掌の上に立てた棒を倒さないようにバランスを取って遊びませんでしたか?) すなわち、「低重心=安定性が高い」という四輪と同じ公式を二輪に当てはめるのは誤りだというわけです。 「アメリカンは重心が低くても安定しているじゃないか!」と思われる方は、その車体構成をよく見てください。直径の大きなフロントタイヤに、フォークのキャスター角はものすごく寝ていて、すこぶる直進性が良さそうですね。 しかも、ライダーは太いリヤタイヤのすぐ近くにどっかり座って、重心はかなり後ろ寄りです。 ビグスクも似たようなものですが、つまりそれらのバイクが持つ高い安定性は、独特のアライメントと重量配分によって得られたものであって、決して重心の低さによるものではないのです。 さて、ようやくここからが本題ですが(汗)、重心が車軸よりも下という極めて低いところにあるフォーミュラカーは、強烈な遠心力を受けても車体はほとんど傾くことがなく、インリフトなども起こらない車体構成になっています。 四輪レースの世界では、それほどまでにロールは忌み嫌われ、排除される方向性です。 それに対して二輪のロールは、四輪のように受動的で邪魔なものではなく曲がるために必要不可欠な動きである上に、バンクさせることで路面からの重心高さが低くなり、遠心力とのバランスを取ることができるため、最初から低重心にしておく必要がないと言えるでしょう。 ちなみに1984年のスペンサーは、ロールではなくピッチングにおいて、低すぎる重心による挙動変化の少なさから、得意だったはずのパワースライドの限界が掴みきれず、転倒を繰り返すことになったと思われます。 実際、コーナー立ち上がりでまるでスピンするかのような転び方をすることもあったようです。 以上、長文になってしまいましたが、誤解が解ければ幸いです。。