元中日の伊奈努投手を知ってますか? 1957年 「ツキの神様や」伊奈投手は六勝一敗、ハーラー・ダービーのトップを切っている現在の調子をこんな短い言葉で表現した。「昨年よりスピードが出たわけでもないし、フォームだってたいして変わらない。球の種類だって同じや。中山の方がぼくより防御率がいい。(1・80)ぼくは2・60)。ただ勝てる試合、勝てそうな試合に出してもらっているだけやないか」という。やわらかな声、やや面長な顔に光るロイド・メガネ。ゆったりとイスに体を沈めて語るところはちょっとした英国製の紳士。「ぼくは小さいときからアマノジャクだった。人が騒いでいるときは静かにしていて、騒ぎがおさまってからワイワイやった」話の中にもそのアマノジャクぶりがちょいちょいとび出す。だがいまの好調は、たんに運にめぐまれたわけではない。もちろんみんなが調子が悪いから、逆に調子のいいところをみせてやったのでもない。フォームにも力んだところがなく触発の危機をはらんだ場面にのぞんで、たんたんとしてのびのびと投げている今年の伊奈投手には安定感がある。彼に聞いてみよう。 ー安定したピッチングをみせているが。 「昨年、一昨年とスリー・クォーターの投法が、シュートの多投から横手に代わりコントロールがなくなって苦しんだ。今シーズンはその点心配ない」 ースタミナの配分は? 「初めから全力をつくしているがただプレートの踏み変えに注意している。ぼくの場合、全力投球でインコースの低目へきまる球が武器だから、プレートの真ん中を踏んで全力投球してみて、そこへ球がきまればプレートを踏む位置が真ん中が中心になる。後半疲れてきて球が右にそれるようだったらプレートの左ハシと適当に変えていく」 ー今後マークされる不安はないか。 「別にない。ぼくが投げられなくなってもウチには大投手がいっぱいいる」 ーこれからの目標は? 「コントロールとスタミナの配分だ」 ーニガ手のチームは? 「上位球団ほど投げやすい。小細工せず力いっぱい投げられる。打たれたって伊奈なら仕方がない。ぐらいに思ってくれるだろうしね」 プロ入り五年目、もう打たれる悲しさも勝った喜びお、それをどう受けとったらいいのかちゃんと身につけている。この無感動が彼の最大の武器なのかもしれない。