元毎日の宮崎一夫投手を知ってますか? 1952年 オリオンズのスプリング・キャンプを見て来た人々が「毎日の企画は凄いよ、ピッチャーが廿人くらいいるぞ」と驚いていたがまさか十人も登録はしないだろう、さすればその大半は来年用か、あるいは「将来用」の新人とふんでいた。たしかにそのとおりで荒巻、野村、上野、山根、榎原、末吉、守田、稲垣と登録されたから今年はこのピッチング・スタッフで乗り切るのかと見ていたら・・・新人和田勇が早くも四月廿七日の対近鉄戦にデビューして初の勝星を挙げ、七月十二日の対近鉄戦にこれまた新人の宮崎一夫が初出場で一勝をかせいで投手陣に加わった。使えると眼をつけたのかその後、西鉄、西鉄、近鉄、大映と好調なチーム相手に登板すると五連勝してしまった。大分前のことであるが毎日陣営のある首脳に「宮崎はまだ使えないか?」と質したら「内野手みたいなきれいな球だからだめでしょう」という答であった、たしかに軽そうに見えるしきれいな球であるが、その宮崎が調子に乗ったとはいえ、強敵相手に五連勝したのはなぜだろう?わかりやすいたとえをひけば「なんの苦もなき水島の・・・」とかいう水鳥がすいすいと軽く泳ぐ裏には、水かきで水をかいている労力がひそんでいるように一見きれいで打ちいい球に評価される宮崎の上手投速球には「スライド」させている苦心がひそんでいるのである。開成高ーコロンビアを通じて投手生活五年、オリオンズに入って二軍投手、これが宮崎の球歴である、大きな舞台もふんでいないし、大試合の経験もないわけであるが、多少でも「投手術」なり「試合の処理」を覚えたとすればコロムビアにいた一年間であったと思う。正銘のオーバー・スローは相当の速さを持っているから、スライダーにはもって来いの球質である、身体全体が柔軟で腰がいいからシュートにも向く投法が出来るのである。若いのに試合前のウォーミング・アップは短くていいらしい、ただしブルペンでの練習は中々長く力を入れている。試合中一番多く投げている球は、直速球のスライダー、ほとんど直球に見えているが、一球、一球スライドがかかっているから相当老巧なバッターまでミートをはずされている、そしてウイニング・ショットはスピードの乗ったシュートを使っている。スライダーとシュート、打者から見れば正反対の回転、流れを見せる球質、これを大胆に投げ込み、時々カーブを交ぜている、投法も球質もいいが、なんといっても投手経験が浅い、まず投手守備が弱いし、投手としての処理、対策を覚えこまねばならない。現在の「カーブ」のきれがよくなるように努めているらしいが、これが身につくと、スライダーもシュートも、もっと生きて来るに違いない。また首を振る癖があるのでその矯正にも努めているらしいが長所としては、強敵相手の登板にさっそうとしかも楽し気にやっていることだと思う、大成する一人としてその研究と努力に期待したい。 宮崎投手 「正銘のオーバースロー」に違いありませんがもとは正銘の横手投の投手だったんです、開成中学の五年生のとき当時新田建設(今の明治座)にいた宮下さん(現在パ・リーグ二軍審判)がそれでは肘をこわすから上手投に変えた方がいいといわれその時以来上手から投げています事実その当時僕のピッチングは横からのシュート一点張りで、このためいつもかすかながら肘に痛みを感じていました、しかしオーバースローに変えてからはそれもなくなり投げているうちにコツをのみこんだのがスライダーです、これに上、横手からのシュートとカーブを交えて投げているわけですが調子のよいときには直球よりもシュートやスライダーの方がスピードが出るんですよ、そのうちに中沢さんのいわれたようにカーブの切れをよくしてシュート、スライダーを有効に生かしたいと思います、肩のつかれなどどこのごろほとんど感じません、むしろ毎日投げないと調子が狂ってしまうくらいでウォーミング・アップも人の倍近くやる方が僕にはいいんです、首をふるのは悪いクセですよ、スピードが殺されますからね、このクセとフィールディング、それとカーブ、僕の宿題は山ほどあります、ただ試合度胸Bというのは少し変ですね、僕は相当心臓がつよいはずなんですが・・・。