元大映の姫野好治投手を知ってますか? 1953年 大分工業で二年、別府星野組で一年半、明電舎で一年余、そして廿四年に大映入りして投手生活十年目の今シーズン監督推薦でオールスター・ゲームに選ばれた。「田舎者なので・・」とボソッと語るような派手なところが少しもないのでおよそ素人受けしない。しかし玄人筋には同じ大映の林投手とともにその巧味を高く評価されている。「セの強打連の一人一人に、あの人にはこの球で、あの人にはこのコースでと考えこんだら神経衰弱になってしまいます。思いきって勝負をするだけです。左打者が苦手なので阪神の金田さんあたりがイヤですね」これがオールスター・ゲームに選ばれた感想。彼はコーチャーに恵まれなかった。大分工業時代に一日だけ当時台湾総督府勤務の渡辺大睦氏(明大OB)にピッチングを見て貰ったことがあるが一日ではなにがなんだかサッパリ。星野組で荒巻投手(毎日)と一緒だったが彼とはタイプも違うのであまり勉強にもならず、わずかにそのころ浜崎氏(阪急監督)から十日間ほどと、明電舎に移ってから雨宮氏(早大OB)にときどきコーチされたぐらいのもの。だから野球が判りかけて来たのは「ほんのここ二、三年」ですという。努力と自分の研究だけで投げて来たのである。その彼が大映ですばらしい幸運に恵まれた。パ・リーグ随一の巧味をもっといわれている林投手にコーチされるようになったのである。彼と全く同じタイプの林に手をとって仕込まれるようになってからグングン腕があがってきた。とくに昨シーズンは彼としてプロ入り以来最高の十三勝をあげ、今年も33イニング無失点の記録を残している。今シーズンは三月廿四日に阪急に勝ち四月九日、十五日と阪急、毎日に勝ち滑り出しがいいので十五勝を突破できるかと思われたが、このところちょっと足ぶみして一日現在六勝六敗(プロ入り以来の通算42勝43敗)しかし六勝のうちシャットアウト・ゲーム四(東急2、阪急1、毎日1)を数えている。「フィールディングが下手で、投球モーションが大きいから南海のように足が早く細かい攻撃をしてくるチームはどうも苦手。今シーズンの目標は十五勝を稼ぐこと。早く林さんのように巧くなりたい」と抱負を語る。林投手は「九州の生れだが夏はそれほど強くない。夏になると自分でダメだときめてかかる気の弱さがある。世間では彼をシュート投手だといっているが試合中はカーブを多く投げる。武器は落ちるカーブ。この球が外角低目にきまるとちょっと打たれない。浮くカーブ、流れるカーブを投げておいて、ポッと落とすのがいい。悪いクセとして一試合のうち一回ぐらいきっと崩れる。今はほとんど横手投げ。この横からのシュートもいいがこれが死球などになるとトタンにガックリしてしまう。もっと図太くなるとのびますよ」という。荒巻投手の父君の紹介で静香夫人と結婚したのが昨年暮。秋ごろには父親となるそうだ廿九歳。