傾いた10円玉が倒れ込んで行くのは、まず単独で転がっていることと、転がり抵抗によって失速し、角運動量や遠心力が失われて行くからです。 車の前輪はタイヤが単独で転がっているわけではありません。たとえ内傾させたとしても、勝手に切れ込んで行くことはありません。 一つは、舵角のある前輪は、後輪から押されています。それも内側から外向きに。そのため転舵初期は、タイヤが変形し(スリップアングル)コーナリングフォースが発生するのです。直進していた物体が、その進行方向と直角の力を受けると旋回運動を始めます。それが円運動の基本です。直角方向の力がなくなると直進運動に戻ります。ハンマー投げがそうです。 さらに操舵輪には、舵角を復元させるためのアライメントが与えられます。4輪の場合はキャスターとキングピン角です。3輪の場合はキャスターだけなので、写真のようにキャスターを大きくとって、復元性と直進性を高めようとしているのでしょう。通常の4輪では考えられないくらいのキャスターがつけられています。キングピンと地面の交点より後方でタイヤが接地し、ここに横力が発生するからです。ハンドルはかなり重いはずです。パワステがあったのかは知りません。 また、キャスターを大きくとることで、転舵時の内傾が大きくなります。この3輪車、前輪のグリップがかなり貧弱で、おまけにバイアスタイヤですから、そうやってキャンバースラストを利用し、少しでもコーナリングフォースを稼ごうとしているのでしょう。3輪ならではの苦労があると思います。なお、最近のラジアルタイヤはキャンバースラストはあまり働かないそうです。 重心の前後位置も難しそうですね。