三菱・ランサーエボリューション
三菱・ランサーエボリューション
ランサーエボリューション () 通称:ランエボは、三菱自動車工業が生産・販売していたセダン型、およびステーションワゴン型のスポーツカー (自動車) である。
ランサーエボリューションは、ランサーの車体に2,000 ccハイパワーターボエンジンを搭載し、世界ラリー選手権 (WRC) におけるホモロゲーションの取得を目指すために限定生産販売されたスポーツモデル。
1980年代のWRCのグループBカーの認定において、市販車に相当するベース車両に車両規定範囲内で様々な改造を施し、再度ホモロゲーションを次の年に取得しデビューさせる際、20台の生産で「エボリューションモデル」の認定をしていた (アウディ・シトロエン・プジョーなど)。グループAでは500台の追加生産でエボリューションモデルとして公認することが出来たが、それはレース用車両のみで (スカイラインGTS‐R、スープラターボAなど)、ラリー用車両ではエボリューションモデルは認められていなかった。この車の呼称は、「三菱・ランサーエボリューション」であるが、厳密には「エボリューションモデル」でなく、公認申請をする度に2500台 (1993年以降のグループA最低生産台数) を生産・販売していた。2001年のWRC規定の変更以降はランサーGSRのエボリューションモデルである認定は得られなかったものの、車名はそのままとしグループNあるいは他のモータースポーツカテゴリーでその存在感を示した。また、VIIIからは日本国外へ正式に輸出が開始されるなど、国内外における三菱自動車のイメージリーダーの一つとして捉えられていた。
実際の販売では、一般販売車両同様に快適装備を備えたGSRと、競技ベースのモデルでエアコンや電動ミラーなどの快適装備やラリー競技向きではない電子制御やブレーキを取り除いた RSの2グレードで展開されている (VIIおよびワゴンではオートマチックのGT-A、IXではGTを追加でラインナップ)。通称ランエボ。ただ単にエボと呼ばれたり、モデルを明確に識別するためにエボ○ (○は数字が入る) と呼ばれることもある。「ワイルド・スピードX2」で同車を指すシーンにおいては原語(英語)では単にEvoと呼ばれていたが、日本語字幕ではランエボとされており、(少なくとも当時の)日米での呼称の差が伺える。ヨーロッパ圏ではWRCの呼称が浸透しており、エボだけではむしろたくさんあることになり、単にランサーと呼ばれることも多い。
エボI - III、エボIV - VI、エボVII - IXでそれぞれ基本となる車体構造が異なっており第1世代、第2世代、第3世代、第4世代という呼び分け方で呼ばれるもしくは執筆される場合もある。
日本国内外で走行性能などの評価が高く人気があるため、車両盗難に遭う例が非常に多く、エボVIII以降のモデルからはイモビライザーが標準装備された。
1992年9月発売。型式名“E-CD9A”。通称“エボI”。キャッチコピーは“スポーツセダンの最高位へ。”。
シリーズ初代モデル。競技ベース車のRSで1170 kgの軽量ボディに250 psのエンジンを搭載し、当時の一般販売車両として異例のパワーウェイトレシオ (4.8 kg/ps 以下) を示す車両であり、この数値はGT-R(BNR32)をも凌駕するものであった。
WRCの出場資格を取得するため、ランサー1800GSRをベースに、E39A型ギャランVR-4の4G63型ターボエンジンとドライブトレインを移植されて開発された。ボディはランサーシリーズ中で最も剛性の高いボディを使っていた中近東向けのタクシー専用車両にスポット増しを施し、バルクヘッドから前をほとんど変更してエンジンを積んだ。しかし、もともと開発期間が1年ほどしか無く、しかもタイヤサイズについて「ベース車両のサイズが基本」とされたため、1インチのサイズアップが限界であった。結局国際自動車連盟 (FIA) のホモロゲーション取得のための間に合わせ感が強く、また十分な走行テストを実施できたとは言えずに発売されたため、異常ともいえるフロントヘビー傾向を持ち、さらに4WDに見られるアンダーステア傾向が強く、不評であった。
生産についてもホモロゲーションのためであり、そういった販売に疑問が残るような車両であったこともあり、テレビCMや店頭での告知などは一切しなかった。2,500台の限定車で積極的にディーラーで紹介されない販売姿勢だったにもかかわらず、発売開始わずか3日で完売した。それを受けて2,500台が追加販売されたが、それでも注文をさばききれず、最終的には7,628台が販売された。
ちなみに車名の候補として、他に「ランサーターボ」「ランサーレボリューション」などが挙げられていた。また当初は一代限りの限定モデルの予定だったため、車名は「ランサーエボリューション 」ではなく単に「ランサーエボリューション」と呼ぶのが正しいが、IIの発売以後は三菱の社内でも正式に「エボI」が略称となった (レトロニム)。
用意されたボデーカラーは、スコーティアホワイト、グレースシルバー、コルトンレッド、ピレネーブラック、サンタムールグリーン。
WRC Gr.Aにワークス参戦したのは1993年第1戦ラリー・モンテカルロから1994年第3戦サファリラリーまでの8戦で、初戦ではケネス・エリクソンが4位入賞、最高順位は1993年第13戦RACラリーと1994年第3戦サファリラリーの第2位であった。
1994年1月発売。型式名“E-CE9A”。通称“エボII”。キャッチコピーは“またも、最強へと進化をとげた。”。
前モデルの問題点を洗い出し、時間をかけて走行テストして、大幅に改良した。不評を買った足回りをメンバーごとすべて変更し、鍛造スチールロアアームなどの採用、ホイールベースおよびトレッドの拡大をした。ボディ剛性の向上、ミッションのローギアード化、リアに機械式LSDの採用、タイヤサイズの適正化 (エボI 195/55R15→エボII 205/60R15)、エンジン内部と吸排気の改良などが行われ、出力は260 PSに向上した。外観に大きな変更はないが、走行性能は大幅に改善された。
もともと、ラリーおよびダートトライアルなどの悪路での競技場面を想定した車両であり、グラベル用ラリータイヤが15インチまでであったこともあり、ブレーキやタイヤは大型化されなかった。しかし、ターマックラリーやサーキットにおいては、出力に対してブレーキやタイヤの容量が不足する傾向が強い。これはエボIIIとエボIVでも同様であった。後にエボVで大幅なタイヤサイズの拡大とブレーキの強化が行われこの問題は解消し、舗装路でのアマチュア競技などでも好成績が見られるようになった。
用意されたボデーカラーは、スコーティアホワイト、クイーンズシルバー、モナコレッド、ピレネーブラック、ムーンライトブルー。
WRC Gr.Aに1994年第5戦アクロポリス・ラリーから1995年第2戦スウェディッシュ・ラリーまでの5戦に参戦し、1995年第2戦スウェディッシュ・ラリーにはランサーエボリューションシリーズとして初優勝を飾った。
1995年1月発売。型式名“E-CE9A”。通称“エボIII”。キャッチコピーは“進化は、とまらない。”。
エボIIの基本車体構造には変更なく、エンジンの冷却性能や空力性能の向上のみを目的に開発された。市販車では異例の大型のリアウイングや、開口部の大きいフロントバンパーを備える。外装だけでなくエンジンにも改良が加えられ、出力を270 PSまで向上させた。
しかし大幅な出力向上のため、比較的高い圧縮比 (ターボエンジンの平均的な圧縮比が8 - 8.5、エボIIIの圧縮比は9) を採用した結果、少しブーストアップするだけでもヘッド抜けなどのトラブルが発生しやすくなった。対策として、エボIIのピストン (後にエボIX用ピストン) を流用し圧縮比を下げ、カムシャフトを交換することで、オーバーラップを大きく取って圧縮圧力を逃がすなどをする場合もある。
エボIやエボIIと比べ派手なエクステリアで第1世代の完成形といえるモデルであり、WRCで初めてチャンピオンをとった車両でもあることから、歴代ランエボの中でも一定の人気がある。
エボIIIからターボラグの解消を目的として、2次エア供給システム (PCCS) が搭載されている。しかし、WRCでの使用を目的としたシステムであり、WRCの規定上、市販車にも同様の機構を搭載する必要があるため搭載されたもので、市販車ではほんの僅かしか動作しないように設定されている。 (ECUによる動作制御) 大径タービンを搭載するエボIIIには、特に有効なシステムであった。
用意されたボデーカラーは、スコーティアホワイト、クイーンズシルバー、モナコレッド、ピレネーブラック、ダンデライオンイエロー。
WRC Gr.Aに1995年第4戦ツール・ド・コルスから1996年第9戦ラリー・カタルーニャまで14戦に参戦し、1995年第4戦ラリー・オーストラリア、1996年第1戦スウェディッシュ・ラリー、第2戦サファリ・ラリー、第5戦ラリー・アルゼンチン、第6戦1000湖ラリー、第7戦ラリー・オーストラリアで優勝した。なお、1996年にはトミ・マキネンが自身初のドライバーズタイトルを獲得している。またグループNではグスタボ・トレレスが王座を獲得している。
1996年8月発売。型式名“E-CN9A”。通称“エボIV”。キャッチコピーは“ランサーの走り、ここに極まる。”。
ベースモデルのランサーが前年にフルモデルチェンジしたため、ボディを新型に刷新した。同時に、第一世代に対しエンジン搭載方向を左右反転させ、トランスミッション内部に設けられていたインターミディエイトギヤ (カウンターシャフトと同じ役割) の廃止により駆動ロスを軽減し、レスポンスに大幅な向上が見られた。また、リアにマルチリンク式サスペンションの採用により路面追従性の向上が見られた。
本モデル最大の特徴はGSRに搭載された、左右の後輪への駆動力を変化させ、旋回性を向上させるアクティブ・ヨー・コントロール (AYC)である。AYCの採用により、エボIIIに比べて大幅に旋回性能を向上させた。しかし、エボIVに搭載されたAYCは比較的完成度が低く、異音が発生するトラブルが多発した。対策として、AYCの作動油の交換や、AYCの調整を行うことで一時的に異音をなくすことができたが、根本的な解決にはならなかった。そのため、HKS関西などによる社外品のLSDへ変更する事例がよく見られた。競技用途では、フロントにヘリカルLSDリアに1.5WAY機械式LSDが装着されたRSが用いられた。(GSRはフロントデフがオープンであった。)
エンジンは鍛造ピストン、ツインスクロールターボの採用、PCCSおよびタービンのノズル面積アップ、ブースト圧のアップ、高速型カムプロフィールの採用により出力を当時の自主規制値いっぱいの280 PSまで向上させた。しかし、本モデルのピストンは過給圧の上昇時にタナ落ちなどのトラブルが発生しやすかった。エボVでは再び鋳造ピストンが採用された。
エクステリアは、エボIIIでリアウイングを大型化した結果、前後の揚力バランスが取れなくなったため、バランスを見直して小型に設計されている。これによりフロントゼロリフト、空気抵抗係数 (Cd値) 0.30を実現した。
歴代のエボ同様に限定生産というかたちを取ったが、センセーショナルな形が人気を呼び歴代モデルの中では最も生産台数が多い。歴代モデルの中でも派手ながらもまとまったデザインであることや、5ナンバーで開発された最終チャンピオンマシンであることが好まれている。また、エボIVの開発後期から中谷明彦が開発に加わることになる。
RSにはスーパークロストランスミッション (Hi及びLo) がオプションで設定された。
用意されたボデーカラーは、スコーティアホワイト、スティールシルバー、パルマーレッド、ピレネーブラック、アイセルブルー。
WRC Gr.Aに1997年第1戦ラリー・モンテカルロから1998年第4戦ラリー・ド・ポルトガルまでの18戦に参戦し、1997年第4戦ラリー・ド・ポルトガル、第5戦ラリー・カタルーニャ、第7戦ラリー・アルゼンチン、第10戦ラリー・フィンランド、1998年第2戦スウェーディッシュ・ラリー、第3戦サファリ・ラリーで優勝、1997年シーズンのドライバーズチャンピオンをトミ・マキネンが、グループNでも王座を獲得した。
台湾の歌手や俳優を務める柯受良が、1997年6月1日に中国山西省臨汾市にて、黄河の壺口瀑布 (幅55 m) をエボIV RSで飛び越える。
1998年1月26日発売。型式名“E-CP9A”。通称“エボV”。キャッチコピーは“V次元の、瞬発力。”。
この世代から当初より開発ドライバーとして中谷明彦が関与しスーパー耐久で常勝だったBCNR33型日産・スカイラインGT-Rに勝つべく様々なアイデアを盛り込む
エボIV以前のモデルの欠点である乾燥路におけるブレーキやタイヤ容量の不足を改善し、WRCのWRカーに対抗すべく3ナンバーサイズとなる車幅1,770 mmのワイドボディを初めて採用。タイヤサイズの拡大 (エボIV 205/50R16→エボV 225/45R17)、フロント17インチ4ポット・リア16インチ2ポット対向のブレンボ社製キャリパーがGSRには標準、競技向けのRSにはオプションで採用された。制動力・走行性能・旋回性能などが大幅に改善され、当時国産280 PSクラスの中でも抜群の加速性能と走行安定性を見せ、競技向けのRSの薄板ボディーにオプションのスーパークロスミッションとブレンボブレーキ搭載車はベストモータリングが筑波サーキットで開催したタイムアタックやレースでは車格が上の大排気量スポーツカーの記録を上回ることも多かった。
その他、フロント倒立式ストラット、アルミ鍛造ロワアーム、角度調整式リアウイング、ノズル面積をアップさせたタービン (エボIV 9 cm→エボV 10.5 cm)、16ビットECUなどが採用された。またベースとなる5代目ランサーが1997年8月にマイナーチェンジしたことに伴い、ヘッドライト、テールレンズが後期型のものに変更された。
馬力はエボIVと変わらず280 PSであるが、タービンノズル面積アップおよびブースト圧のアップによりトルクがエボIV比で+2 kg-mの38.0 kg-mに向上した。
本モデルは、WRCやサーキットにおいても好成績を残した。WRCでは、改造範囲の狭いグループA規定の車両でありながら、比較的改造範囲の広いWRカー規定の車両を圧倒して、マニュファクチャラーズチャンピオン、ドライバーズチャンピオン、グループNの同年トリプル優勝という偉業を成し遂げた。
GSRに用意されたボデーカラーは、スコーティアホワイト、サテライトシルバー、パルマーレッド、ピレネーブラック、ダンデライオンイエロー。
WRC Gr.Aに1998年第5戦ラリー・カタルーニャから第13戦ラリー・オブ・グレートブリテンまでの9戦に参戦し、第7戦ラリー・アルゼンチン、第10戦ラリー・フィンランド、第11戦ラリー・サンレモ、第13戦ラリー・オブ・グレートブリテンで優勝し、三菱初となるマニュファクチャラーズタイトル、トミ・マキネンのドライバーズタイトル、さらにはGr.Nでもタイトルを獲得した。
1999年1月22日発売。型式名GF-CP9A。通称エボVI。キャッチコピーは“次の頂点へ、進化していく。”。
エボVをベースに、細部の熟成によるポテンシャルアップを図ると共に、'99WRCラリーレギュレーションへ対応するための外観変更を含めた内外観のリフレッシュを図るため開発された。
空気抵抗および冷却性能、またフロントリフトの改善を目的として、ナンバープレート位置を中央から左側に変更、フォグランプの小径化などによる前面開口部形状の拡大、リアウイングの2段化で、空力が改善された。しかし、WRC Gr.A規定では問題なかったが、WRカー規定を超えるとしてFIAが指導したため、下段とトランクの間にある隙間をカーボンケブラーで塞ぎ、上段ウィングのみが機能するようになっている。前モデルのエボVで、硬めにセッティングされた足回りが街乗りには向かないことが不評であったため、フロントサスのロールセンター軸をエボV比で30 mm低く設定することで、多少ソフトなセッティングに変更された。しかし競技目的には向かず、全日本ラリー等ではエボVに勝つことができないという、ある種の「退化」を起こしている。ただし競技用グレードのRSではエボVと同セッティングの足回りがオプションで選択可能となっていた。
エンジンの馬力・トルクはエボVと変わらないが、冷却オイル路内蔵のクーリングチャンネル式ピストンの採用や冷却水レイアウトの変更、オイルクーラーの大型化、オイルクーラーベンチレーターやエアブローダクトの採用など、エンジンの耐久性と信頼性を向上させている。また、RSには純正でチタンアルミ合金製タービンが採用され、タービンブレードの慣性力を50%低減している。その他、このVI以降はRSでもブレンボブレーキとのセットオプションでAYCが選択可能となった。
用意されたボデーカラーは、スコーティアホワイト、サテライトシルバー、ピレネーブラック、アイセルブルー、ランスブルー。
WRC Gr.Aに1999年第1戦モンテカルロから2001年第10戦ニュージーランドまでの38戦に参戦し、1999年シーズンは第1戦モンテカルロ、第2戦スウェーディッシュ・ラリー、第4戦ポルトガル、第9戦ニュージーランド、第12戦サンレモで優勝し、3年連続となるドライバーズタイトルをトミ・マキネンが獲得した。またグループNでもタイトルを獲得した。2000年シーズンは第1戦モンテカルロで優勝し、第9戦ニュージーランドからはフロントバンパーがTMEを模したものに変更された。またこの年もグループNでタイトルを獲得した。2001年シーズンは第1戦モンテカルロ、第3戦ポルトガル、第8戦サファリで優勝したが、セディアベースのWRカーへの移行に伴い、市販のランエボをベースにしたワークスマシンの系譜は終焉を迎えたがグループNではタイトルを獲得した。
2000年1月8日発売。型式名“GF-CP9A”。通称“エボVI T.M.E”または“エボ6.5”。
当時の三菱のWRCワークスドライバー、トミ・マキネンの4年連続ドライバーズ・チャンピオン獲得を記念して、同選手の名前を冠した特別仕様車。比較的高速なターマック (舗装路) ラリーを意識して前部のバンパー形状を中谷明彦のデザインを基に見直し、フォグランプ設置部の廃止により空力を改善した。
足回りは従来より10 mmダウンしたターマック仕様サスペンション (フロント:エボV、リア:エボVI)、フロントストラットタワーバーを採用した。尚、RSでのターマック仕様サスペンションはメーカオプション (標準はフロント・リアともエボ6のグラベル仕様)。その他、GSRでもRSのクイックステアリングギアが採用された。イリジウムプラグや、プラスチック製クーリングパネルも採用された。GSRでは、新型のハイレスポンスチタンアルミ合金ターボチャージャー採用により、中低速トルクとレスポンスの向上が図られた (コンプレッサーホイール径の小型化及び翼形状の変更。最大トルクの発生回転数がエボV、エボVIよりも低くなった。エボV、エボVI 3,000 rpm→エボVI TME 2,750 rpm)。マフラーもVIまでの楕円のテールから真円の大口径マフラーへ変更されている。出力などの動力性能での大きな変更点はなかったが、完成度は確実に上がっていた。尚、RSでは新型のハイレスポンスチタンアルミ合金ターボチャージャーは、メーカーオプション (標準は、従来RSに使われていたチタンアルミ合金タービンホイールのターボチャージャー)。
インテリアは黒色と赤色が基調になり、シフトノブとシフトレバーブーツ及びステアリングホイールはレッドステッチが施されたものを採用、計器類も赤い文字盤となり、TOMMI MAKINENと書かれた赤いレカロ社製シートも採用された。ホイールは、OZ社製の12本スポークホイールからENKEI社製の10本スポークホイールに変更された。パッションレッド・ボディーカラー車には、WRCワークスマシンをイメージしたスペシャルカラーリングパッケージがオプションで設定された。
WRCのGr.Aホモロゲーションを取得しなかったのはランエボ史上初である。2000年シーズンに使用されたワークスマシンはフロントバンパーの形状は似ているものの、サイドのカナード形状がダウンフォースを発生させるとして縮小されている。グラベルでの使用に対してはリップ部分も最初から外されていたため、比較的おとなしい外観となっていた。
用意されたボデーカラーは、スコーティアホワイト、サテライトシルバー、ピレネーブラック、カナルブルー、パッションレッド。
RSにも多彩なメーカオプションを設定した。RSのメーカーオプション:スーパークロスギアHi/Lo (GSRに比べ3/4/5速をクロス化)、薄板ボディ仕様 (インパクトバーのレスオプション、ルーフパネル・トランクリッドパネルの薄板化)、ハイレスポンスチタンアルミ合金ターボチャージャー、ツインプレートクラッチ、ターマック仕様サスペンション、17インチホイール・ブレンボ、AYC、エアロパーツレス仕様、リアワイパー、寒冷地仕様。
開発ドライバーの中谷明彦によればニュルブルクリンク北コ-スでの開発テストを行うようになったという
2001年2月3日発売。型式名“GH-CT9A”。通称“エボVII”
ベースモデルは前年にフルモデルチェンジしたランサーセディアになり、エボVI以前のモデルと比べ、おとなしい外観となった。新開発のボディは、サスペンション取付部やボディフレーム結合部の補強や、専用リーンフォースメントの追加、スポット溶接の追加、などにより、エボVI比1.5倍の曲げ剛性を実現した。またランサーエボリューションVIIからヘッドライトにHIDが採用され、以降のエボシリーズはGSRグレードにHIDが標準装備されている。
ベースモデルのランサーセディアのボディが大型化したことや、アクティブ・センター・ディファレンシャル (ACD) の新規採用による重量増があった。
前後輪の差動制限を電子制御するACD (電子制御可変多板クラッチ機構) をエボVIIで新規採用した。道路のコンディションに合わせて、『ターマック (舗装路)』・『グラベル (未舗装路)』・『スノー (雪道)』の3モードを車内のスイッチで切り替え、センターデフをコントロール可能で、パーキングブレーキ作動時に作動制限をフリーにする機能も採用された。この機能により、ラリーやジムカーナなどの競技での急旋回が容易になり、前モデルにも増して、旋回性能を高めた。ギア比もエボVI比で、1速がローギアード化され、5速はハイギアード化された。車両本体価格はGSRで299万円と、エボVIよりも安価になった。
CP型までは「ランサー GSR/RS エボリューション」という、ランサーGSRまたはRSのエボリューションモデルという表記だったものが、このモデル以降は「ランサーエボリューション GSR/RS」と、ランサーエボリューションで一つの車名であるという表記に変更された。
このモデルより三菱はWRCでの活動をグループAからCS2A・ランサーセディアをベースとしたWRカーに移行 (ネーミングのみエボリューションを継承) したが、これはランサーエボリューションとランサーセディアで全長などの違いから、「ランサーエボリューションはランサーエボリューションという単一車種であり、ランサーセディアのバリエーション車種ではない」とされてしまい、販売台数の不足からWRカー規定のホモロゲーションが取得できなかったためである。そのためエボはグループNおよび全日本ラリーやスーパー耐久などの国内レース向けのモデルに特化していくことになる。
エボⅤ以降開発ドライバーを歴任した中谷明彦がベストカーに書いたコラム、REV SPEEDの自伝によると当初三菱・ランサーセディアのボディーサイズとE3系三菱・ギャランVR-4とサイズがほぼ同一であることから当初ランサ-エボリュ-ションⅥトミマキネンエディションで最後になることや販売するかどうか決めかねていたことが伝えられていたという。
ランエボ初のAT採用モデルとして追加販売された。「INVECS-II」と呼ばれるスポーツモード付き5速AT採用によりスポーツセダン需要の取り込みを図った。
オートマチックトランスミッションの特性を考慮し、エンジン出力を272 PSに落としてピークパワーよりも中・低回転域のトルクを重視したセッティングを採用した。また、競技車輌としてのホモロゲーションを取得していなかった (現在は日本自動車連盟認定済み) ためにアンチラグシステムは不要として、PCCS用パイピングは省かれている。内装は、ランエボ初の本革8ウェイパワーシート(ランサーセディアワゴン スーパーパッケージ装着車と同様)をオプションで用意しスポーツ性一辺倒であった性格を転換させた他、ランエボでは恒例だったMOMO製ステアリングを変速ボタン (ステアマチック) を組み合わせた自社製に変更。また、ランサーセディアワゴン スポーツエディションIIと同様のメタリックブルーのパネルを採用。外観はシティユースを重視した仕様とし、リアウイングを専用設計の小型のものを標準で装備した (GSRと同じ大型リアウイング、ならびにウイングレス仕様をオプションで選択可能とした)。
フロント周りは、バンパー左側にAT用オイルクーラーの通風口が設けられたため、ナンバープレート取付位置をバンパー中央部へ変更。その他、無骨なイメージの転換を目的として、ボンネット上のエアアウトレット・エアインテークも廃している。
2003年1月31日発売。型式名“GH-CT9A”。通称“エボVIII”。
ダイムラー・クライスラーより移籍したデザイナー、オリビエ・ブーレイが三菱車共通のアイデンティティとして提唱した、富士山型のグリルが採用された。コンサバティブな長方形グリルから先述の富士山型グリル (通称「ブーレイ顔」) への変更は発売当時は不評を買い、ラジエターの冷却性低下や空気抵抗の増大を招いた。
もっとも、メカニズムにおいては先代のエボVIIより、着実に進化を果たしており、特にトランスミッションは6速MT化 (愛知機械工業製) されている (RSには5速MT仕様も設定)。また、ガソリンタンクの容量がエボVIIは48リットルだったが、VIIIではGSRが55リットル、RSが50リットルと拡張されている。
基本的にグレードはGSRとRSの2種類である。両者ではヘッドライト点灯時のテールランプ点灯パターンに違いがある。ヘッドライト点灯時、GSRはテールランプが4個とも点灯するが、RSは奥の2個のみが点灯し、ブレーキを踏んだ時のみ4個全てが点灯する。
AYCの内部構造を見直し、制御トルク量を増加させたスーパーAYCを採用 (RSは標準で1.5WAY機械式LSD、スーパーAYCはオプション)。リアウイングが量産セダン世界初のカーボン製になった。またこのモデルから日本国外への輸出が正式に開始された。スーパーAYCの性能と評価は高く、操縦性でライバルのインプレッサを超えたとさえ言われた。ただし、輸出モデルにはACD及びAYCは搭載されていない。また、年々増加している盗難対策に、本モデルからはイモビライザーが全グレード標準装備となった。
2004年2月13日発売。型式名“GH-CT9A”。通称“エボVIII MR”または“エボ8.5”。
ギャランGTOから続くMitsubishi Racingを意味するMRのネーミングを冠した、エボVIIIの熟成型モデル。その変更箇所は数多く、新たに「エボIX」を名乗っても不思議ではないほどの改良が加えられていた。この大幅な改良により当時、最後のランエボではないかという噂がながれた。
ビルシュタイン社製ダンパーを採用し、ドア内部のサイドインパクトバーをアルミ化、量産車で初となるアルミルーフの採用により、約10 kgの軽量化を達成した。またオプションとしてルーフ上に取り付ける「ボルテックス・ジェネレーター」が用意された。アルミホイールはエボVIIIのエンケイ社製の17インチ6本スポークに加え、BBS社製の17インチ鍛造軽量アルミホイールがメーカーオプションとなった (エボIX、エボワゴンにもメーカーオプションで設定される)。外見上のエボVIIIとの相違点は、ヘッドライトとリアコンビランプがブラックアウト、ウイング翼端板のガンメタリック (アイゼングレー) 塗色化、アルミルーフ採用に伴うルーフパネル端部のプレスリブに留まる。また、このモデルではタービンがエボVおよびエボVIと同じ大容量タービンが採用され (GSRとRS6速MT車のみ。RS5速MT車はエボVII、エボVIIIと同じタービン)、カムプロフィールもVIIIに比べ高回転向きに変更されている。またこのモデルのRSグレードは、CT系 (いわゆる第3世代エボ) 中で最も軽量である。
2005年3月3日発売。型式名“GH-CT9A”。通称“エボIX”。
ランエボに搭載されるエンジンとして初の連続可変バルブタイミング機構MIVECを採用、また今回からターボのコンプレッサーハウジングを変更、コンプレッサーホイールにマグネシウム合金を (GSRではオプションとして) 採用し、従来のアルミニウム合金よりもレスポンス向上を図った。その結果、最大トルクの発生回転数がエボVIII MRの3,500 rpmから3,000 rpmに下がり、低回転域のトルクアップおよびトルクバンド幅の増大と高回転域でのレスポンスが向上した。ただし、マグネシウムコンプレッサー仕様は、過給圧を上昇させるとコンプレッサーブレードが割れやすいことが報告されており、2005年12月以降生産分については対策品がつけられている。この際、タービンの部品番号の末尾が0から1に変更されている。RSの場合、GSR用などのアルミニウムコンプレッサー仕様に交換することにより解消が可能であるが、高額な部品であるためユーザーの負担は大きい。
本モデルでは、GSRとRSの中間グレードとしてGTがラインナップに加えられた。GTはリアデフに1.5WAY機械式LSD、5速MT、リア薄板ガラス、ハロゲンヘッドライト、マグネシウム合金ターボを装備。その他のボディーカラーの選択、オートエアコン・キーレスエントリーなどの快適装備、ビルシュタイン社製ダンパー (レスオプション可)、ブレンボ社製ブレーキなどの足回りなどはGSRと同じである。車両本体価格はGSRより抑えられており、車重もGSRより約20 kg軽い。
その他、エボVIII MRから基本コンポーネンツ (スーパーAYC、ACD、ビルシュタイン社製ダンパー採用、ルーフやドア内部のサイドインパクトバーをアルミ化など) は変わらないものの、先述のエボVIIIで不評だったブーレイ顔が廃止され、中谷明彦・木下隆之組で走らせていたテスト&サービスのスーパー耐久仕様のフロントバンパーに近似したデザインのものとなった。またリアバンパー中央部にディフューザーを装備し空力を向上させ、リアの車高を5 mm落し接地性向上を図った。他にもカーボン製リアウイングが中空化されるなど、細かな変更や改良が加えられている。
2005年9月7日発売。型式名“GH-CT9W”。通称“エボワゴン”。
ランエボ初のステーションワゴンの形状として登場、エボIXのシャーシをベースとし、ランサーワゴンの「上半分」を溶接して製造された。6速MT搭載のGTと5速AT搭載のGT-Aをラインナップした。
GTはエボIXのエンジンと同じMIVECを搭載し、280 PS / 6,500 rpm・40.0 kg-m / 3,000 rpmの出力を発揮する。GT-AはエボVIIGT-Aと同じエンジンを搭載し、272 PS / 6,500 rpm・35.0 kg-m / 3,000 rpmと、GTに比べ抑え目の出力を発揮する。ナンバープレートもエボVIIGT-Aと同じく中央に設置されている。
通常のランサーワゴンとは外観こそ似ているものの、ボディの骨格構造からして異なる。シャーシは基より外観も、フロントマスクを初めとして、リアブリスターフェンダーなどランエボ譲りの相違点を持つ。なおリアルーフスポイラーはランサーセディアワゴンに設定されていた「ラリーアートエディション」のものを流用している。
一般的にワゴン車は、同設計のセダンと比較してボディ剛性面で劣るとされるが、エボワゴンの場合、それを補うためのバックドア開口部への重点的なスポット溶接等により、280 PSを発揮するエンジンパワーに負けないよう、十分な剛性を持って設計されている。そのため、リアの車重が増加することとなったが、FFベースで開発されたランエボが元々フロントヘビーであったことにより、前後の重量配分が改善された。その結果、リアのトラクションの向上が見られたという (自動車評論家の中には、ベースのセダンと比較して、操縦性についてはむしろ好ましいとする意見もある。)。また、スーパー耐久に参戦した際、空力特性に優れるワゴンボディ形状が作用して、ストレートでの最高速がセダンよりも伸び、適正な重量配分によりコーナリング中の挙動にも安定性の向上がみられた。しかし、絶対的な重量はセダン比で増加しているため、ブレーキングポイントがセダンよりも手前になってしまう、コーナリング中の速度が上げられないなどの弱点を持つためセダンの牙城を崩すに至らなかった。
シャーシやパワートレインはエボIXやエボVIII MRのキャリーオーバーで、リアデファレンシャルギアもエボIX GTと同じく、AYCではなく1.5WAY機械式LSDが採用されている。
その他、ワゴンとしての使い勝手を考慮し、リアシート収納によるシートアレンジ (2 - 3名乗車) により、フラットで大容量なラゲッジスペースを確保できる。ユーティリティ面ではラゲッジスペースに12 Vのアクセサリーソケットを装備するなど、走行性能に関わる装備以外も充実している。
2006年8月29日発売。ランサーエボリューションIX MRの型式名はGH-CT9A。通称エボIX MRまたはエボ9.5。ランサーエボリューションワゴン MRの型式名はGH-CT9W。通称エボワゴン MR。
Mitsubishi Racingを意味するMRのネーミングを冠したエボIX及びエボワゴンの熟成型であり、同時にランエボとしては、4G63型ターボエンジンを搭載する最後のモデルになっている。セダンがGSRとRS、ワゴンがGTとGT-Aという、それぞれ2グレードずつ、合計4グレードが発売される。
エボIX、ワゴンからのエンジン系の大きな変化はなされず、レスポンスアップを狙ってタービン入口の小径化 (下記参照) がされた。また、シートの縫い目を赤ステッチへ変更。内装パネルのピアノブラック化、フロントヘッドライト内部のブラックメッキ化、ヘッドライトのオートレベライザーの追加によりミラースイッチの移動。フロントエアダム下部の形状変更、揚力の低減と気流の制御により、さらなる空力特性の向上を図っている。アイバッハ社製コイルスプリングが、GSRでは標準、RSではセットオプションで設定される。このスプリングを装着することで、フロントで-10 mm、リアで-5 mm車高が変更され、より低重心化を図っている。最高出力とトルク、また発生回転数などはエボIXから変化しないが、MIVECターボのセッティングや制御の最適化・ファインチューニングが成され、さらにレスポンスを向上させている。ACD・スーパーAYCのセッティングも変更され、旋回性を向上させている。IXのエボワゴンに存在したサンルーフのメーカーオプション設定はなくなった。
正式発表前より、「4グレード総計で1,500台限定の希少性」として、希少性を重視した予約販売が行われたが、ため例に漏れず、追加生産が行われた。追加生産分のバックオーダーを含めると総生産台数としては、。
ターボチャージャーは、コンプレッサーホイール入口径を縮小することでレスポンス重視のセッティングになり、材質は、標準装備品がチタンアルミ合金製タービンホイールとアルミ合金製コンプレッサーホイールに変更された (GSR/RS)。標準装備品はハウジングを再設計することで、小型化が図られている。マグネシウム合金製コンプレッサーホイールについては、標準装備品と同様コンプレッサーホイール入口径が縮小されているが、エボIXと同様の寸法で、コンプレッサホイールの肉厚をIXの対策品よりさらに増し、マグネシウム合金の材質を変更した。これにより、当初の懸案事項であったコンプレッサーブレード破損のリスクを低減した。
メーカーオプションのマグネシウム合金コンプレッサーは、エボIXの初期型で不良が多発したことで敬遠され、エボIX MRでは予約分の時点で標準のアルミ合金が欠品した。そのため、メーカーオプションのマグネシウム合金コンプレッサー仕様なら即納、標準仕様なら3か月待ちという奇妙な事態となった。前述の通り、エボIX MRのマグネシウム合金はエボIXのそれとは別物である。
エボIXをベースに改造が施され、四輪すべてにインホイールモーターを搭載する電気自動車。MIEVとは Mitsubishi In-wheel motor Electric Vehicle のこと (詳細はMIEVを参照)。
四輪全てにモーターを搭載する四輪駆動車で、エンジンやトランスミッションを搭載しないためボンネット中には何も搭載されていない。電池にはジーエス・ユアサコーポレーションのリチウムイオン二次電池を使用し、モーターは東洋電機製造と三菱自動車の共同開発したもの。このモーターはアウターローター方式を採用しており、通常のモーターとは違ってドーナツ型をしている。電池の発生する直流をインバーターで交流にして電源にする。内装は一般的なオートマチックトランスミッション車とほぼ変わりはない。シフトレバーもエボVII GT-Aと同様のものが採用されている。リアウイングは、ランサーWRC05仕様と同形状のものを採用。
2005年の発表以来、ナンバープレートを取得して公道での走行を含め、実用化に向けて実験中である。しかし、インホイールモーターの軽量化が難しく、開発は難航している。
2007年10月1日発売 (SSTモデルは同年11月下旬発売)
2007年4月26日生産の発表され、同年に10月に発売されたモデル。型式名“CBA-CZ4A”、通称“エボX”。キャッチコピーは、“その進化は、一瞬で次代を抜き去る。”。価格は299万7,750円から375万600円。2007年度の目標販売台数は4,000台と発表されている。エボシリーズはそれまで期間や台数を限定した生産が行われてきたが、本モデルでは初めてカタログモデルとなった。
2005年に東京モーターショーでベース車両となるランサー (ギャランフォルティス) の販売前コンセプトカー『Concept-X』および『Concept-Sportsback』が発表された。その後2007年3月デトロイトモーターショーで市販ランサー (ギャランフォルティス) の発表と、次期ランサーエボリューションXのプロトタイプとなるコンセプトカー『Prototype-X』を展示していた。エボXはそれを市販化したものである。
7代目ランサーの日本向け標準モデルが「ギャランフォルティス」の名称で発売され、日本国内的に言えばエボXはギャランフォルティスベースということになる。しかし、輸出も行う単一モデルであることから日本国外向けにも、標準モデルは「ランサー」、そして、スポーツモデルは「ランサーエボリューション」を名乗る。
ギャランフォルティスとボディモノコックは共有している。サスペンションがメンバーから違うものになっており、前輪が15 mm前に出た。バンパーで前後オーバーハングを切り詰めて全長を75 mm短くしている。また全高もアルミルーフの採用とロールセンター低下により10 mm低くし、リアとフロントのフェンダーを大きくし、トレッドも拡大して走行安定性を高めた。ボディフレームにはフォルティス同様、最高で980MPa級の高張力鋼を使用している。
トランスミッションにはオーソドックスな5速MTの他、前モデルで採用されていた6速MTの代わりに、トルクコンバーターを使わない新開発の6速Twin Clutch SSTが搭載される。またTwin clutch SST(DCT)車は自動変速モードがある他、クラッチペダルがない為、法律上AT車扱いとされ、AT限定運転免許でも運転が可能となっている。この為、ランエボセダンとしてはエボⅦGT-Aに次ぐ2例目のAT車といえる。
エンジンはこれまでの4G63型ではなく、ワールドエンジンであるオールアルミブロックの4B11型を搭載している。重量が軽量化されたことに加え、ヨーモーメントの低減に大きく寄与している。トルクはMIVECとの組み合わせにより422 N-m (43.0 kg-m) に。なお、自動車馬力規制が解除された後も「無駄な出力競争を避けるため」エボXは206 kW (280 PS) にとどまったが、2008年10月に行われた1回目のマイナーチェンジでエンジン出力は300 PSに高められた。
4WDシステムは新開発の車両運動統合制御システム「S-AWC」が搭載される。ジェット戦闘機をモチーフにデザインされた大きく開いたフロントグリル「ジェットファイターグリル」が特徴的である。
モデルは街乗りに主眼を置いたGSRと、競技ベース車となるRSの2モデル。GSRはTC-SST 6速ATと5速MT、RSは5速MTのみがラインナップされる。競技ベース車のRSは、GSRには標準装備されている助手席エアバッグやフルオートエアコンと言ったものが搭載されず、ヘッドライトもGSRのディスチャージヘッドランプに対し、安価なハロゲンランプになっているなどして価格と重量を抑えている。また、これまでは装備されていたリアウイングでさえオプション化されている。
2015年4月10日、三菱自動車はランサーエボリューションXの特別仕様車「ランサーエボリューション ファイナルエディション」を8月に発売することを発表し、先行予約の受付を開始した。
本モデルは1,000台の限定販売で、販売台数に達した時点で予約の受付を終了。また、「ファイナルエディション」の発売をもって日本国内での「ランサーエボリューションX」の生産・販売を終了することも発表された。これは同時に、日本国内市場において乗用車、及び自社生産車種のラインナップからランサーの名前が消滅するだけでなく日本国内での自社開発によるセダン市場から完全撤退する事も意味している。“走りに生きた、という誇り。”のキャッチコピーが示す通り、これがランサーエボリューションシリーズはもとより、ランサーシリーズの集大成となる。
「GSR」の5MT車をベースに、外観はフロントグリルモールをダーククロームメッキに、バンパーセンターとボンネットフードエアアウトレットをグロスブラック塗装に、BBS社製18インチ鍛造軽量アルミホイールをダーク調塗装に変更。ボディカラーは5色を設定するとともに、メーカーオプションとしてルーフ部をブラック塗装とした2トーンカラーも設定している。内装は基調色をブラックで統一し、RECARO社製レザーコンビネーションシート、ステアリングホイール、シフトノブ、パーキングレバー、フロアコンソールリッドにレッドステッチを施した。
エンジンにはナトリウム封入エキゾーストバルブを追加することで最高出力を向上させたほか、ベースグレードではメーカーオプション設定となっているハイパフォーマンスパッケージを標準装備した。
その他、リアトランクに「Final Edition」のエンブレムを、フロアコンソールにはシリアルナンバープレートをそれぞれ装着し、マルチインフォメーションディスプレイのオープニング画面には「Final Edition」を表示する専用仕様を施した。
1992年にデビューしたランサーエボリューションはランサーGSRおよびRSのバリエーションであり正式にはGSR及びRSエボリューションだった。これは当時のWRCホモロゲーションに合致するグループAのラリーカーを作成するために必要な措置で、この状況はエボVI TMEまで続いたが、エボVIIからは独立した車種のランサーエボリューションとして発売され、そのグレードとしてGSR・RSおよびGTが設定された。WRカーに移行した当初の2001年 - 2002年まではランサーエボリューションWRCを名乗ったが、ホモロゲーションの制約などから通常のランサーをベースモデルとしている。
2012年を以ってPWRCが消滅した現在も規則上WRCとWRC2で出走可能で、多数のプライベーターがスポット参戦している。しかしWRカーやグループR5には戦闘力で全く敵わないため、2016年以降フル参戦で使用する者はいなくなった。
グループNや、グループNの改造範囲を緩和したグループR4仕様のランサーは現在もAPRCやERC、全日本ラリー選手権などの地域ラリーでメイン車両として活躍している。
WRCでの活躍などで、日本国外でも高い人気を得ている。そのため、エボVIII以降は正規に輸出が行われている。
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