ローバー・200
ローバー・200
ローバー200(Rover 200)、後にローバー・25(Rover 25)は、オースチン・ローバー・グループ、後にローバー・グループとMGローバーが製造し、ローバー・ブランドで販売していたコンパクトカーである。
ローバー・200は3世代に渡り生産された。初代にはホンダ・バラードを基にした4ドア・サルーン、2代目には3ドア・ハッチバックと5ドア・ハッチバック、同時に2ドア・クーペおよび少量生産の2ドア・カブリオレがあった。姉妹車であるホンダ・コンチェルトは、ローバーのロングブリッジ工場の同じ生産ライン上で生産されていた。最終世代はローバーが先代のプラットフォーム上に独自に開発し、3ドアと5ドア・ハッチバックが提供された。2000年にローバー自体が売却されるとフェイスリフトを施され、ローバー・25とMG ZRと改称されて販売された。2005年にMGローバーが財産管理()下に置かれると生産は停止された。「ローバー」の名称以外のこの車の生産権と治具類は現在は中華人民共和国(中国)の自動車メーカー南京汽車が所有している。
初代(コードネームのSD3と言及されることもある)はそれ以前のトライアンフ・アクレイムの後継車であり、ブリティッシュ・レイランド(BL)とホンダの協業による第2作目であった。この車は4ドア・サルーンのみで、サイズ的にはその中間の大きさであったが自社製のマエストロやモンテゴよりも上級の市場に向けて企画された。
本質的に200シリーズはイギリス製のホンダ・バラードであり、元々の設計は両社の協力により行われた。エンジンはホンダ・シビック派生の 'EV2' 71 PS (52 kW; 70 bhp) 1.3 L 12 バルブ エンジンかBL自社製の1.6 L Sシリーズ()・エンジン(出力86 PS (63 kW; 85 bhp のキャブレター版か103 PS (76 kW; 102 bhp)のルーカス製EFI版)が搭載されていた。搭載されたエンジンによりRover 213又はRover 216というバッジが付けられた。
213はホンダ製の5速マニュアルトランスミッション(MT)かホンダ製の3速オートマチックトランスミッション(AT)を使用していた。興味深いことに同じBL製のSシリーズ・エンジンを搭載したマエストロやモンテゴとは異なり216もホンダ製の5速MTを採用していた。216にはドイツのZF製4速ATをオプションで搭載した車もあった。
「ホンダ」のバッジを着けたモデルはイギリス国内で生産された最初のホンダ車となった(200シリーズの先代モデルであるトライアンフ・アクレイムに相当するホンダ車はイギリス内では販売されなかった)。バラードのボディ、後に完成車はこれに相当するローバー車と共にロングブリッジ工場で生産されたが、バラードは完成後に品質管理のためにホンダの新しいスウィンドン工場()へ運ばれた。
この車はBBCテレビ()の連続コメディドラマ『』(1990–1995)内でと夫妻の自家用車として知られる。初期の頃はライトブルーの1987年の216Sであったが、後期になると1989年の216SE EFIモデル(同一の車に見えるように「216S」のバッジに付け替え、同一のナンバープレートを付けて)が使用された。
グレード(1989年7月時点):
X = 設定無し
✓ = 設定有り
O = オプション
ローバー・200 Mk 2と呼ばれることもあるR8 は1989年に発売された。バラードを基にしたMk 1とは異なりこの車はマエストロを代替する5ドア・ハッチバックサルーン車であり、400シリーズと呼ばれるサルーン版がMk 1の代替車となった。この当時コンパクトカーの多くのサルーン版はハッチバック版の姉妹車よりも幾分上級の市場向けに高級な装備や高い価格が付けられた別名称の車として仕立てられることがあったため400シリーズは別立てとされた。200シリーズには3ドア・ハッチバック、2ドア・クーペ 、2ドア・カブリオレの派生モデルがある一方で400シリーズには5ドア・エステート版があった。これらの派生モデルは全てローバー独自の設計/生産モデルであり、ホンダ版には用意されていなかった。
R8 は新たに民営化されたローバー・グループとして初の製品であった。この車は再びホンダとの共同開発車(ホンダはヨーロッパ向けの新型車コンチェルトを生産)であり、双方ともにローバーのロングブリッジ工場の同じ生産ライン上で生産された。200とコンチェルトは第4世代のEC型ホンダ・シビックを基にしており、シビック自体は3ドア・ハッチバック、クーペ(CR-X)、4ドア・サルーンがイギリス国内で販売された(ホンダは同じクラス内で実質的に同じ車を2つの異なるサルーンとして効果的に擁していた)。
この200でローバーの全く新しいKシリーズ・ファミリー( family)の草分けとなるエンジン(1.4 L (1396 cc) ツインカム 16バルブ)が導入された。1.6 L (1590 cc) モデルにはホンダ製D16A6 SOHCかD16A8 DOHCが搭載され、その後まもなく(1991年)よりスポーツ性の高いモデルには800シリーズから流用した2.0 L Mシリーズ・エンジン()が搭載された。後期型では標準で200 PS (147 kW; 197 bhp)の出力を発生するより堅牢なTシリーズ・エンジン()が少数生産されたローバー220のGTiとGSi-Turboモデルに搭載された。1.4 Lのローバー製エンジン搭載モデルでは共同開発されたプジョー/ローバー・R65型ギアボックスが、1.6 Lと2.0 Lエンジン搭載モデルではホンダの設計でライセンス生産されたPG1型ギアボックスが使用された。
自然吸気の1.9 L XUD9型とターボチャージャー付1.8 L XUD7T型という2種類のPSA製副室式のディーゼルエンジン(非電子制御ルーカスCAV噴射ポンプ)も選択することができた。プジョー車とシトロエン車に搭載されたこれらのエンジンはこのクラスでも最上位の洗練度を見せていたが、ローバー車ではそれ程でもなかった。これらのエンジンは、オースチン・マエストロやモンテゴで使用されていた低燃費ではあるが騒音の大きい非電子制御のボッシュ・HPVE 直接噴射式ローバー・MDi/パーキンス・プリマ(Perkins Prima) ディーゼルエンジンが新型車用としては余りに洗練度に欠けるという理由で採用された。並行して販売されたローバー・200と標準装備のマエストロは購入者に対して洗練度の高さと現代的なディーゼルエンジンを兼ね備えた車か洗練度に欠け旧態化してはいるが買い得感のある車という選択肢を与えた。ボッシュ製ではなくルーカス製燃料噴射装置を使用したためR8 のディーゼル車はバイオディーゼル燃料との相性は良くなかったが、型エンジン自体はその種の燃料との相性が最良の部類のエンジンであった。
イギリス国内では平均して毎年11万台近くのローバー・200と400が販売された。ローバー・214は『』誌の1990年度「カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得した。
200は1992年に軽いフェイスリフトを受けて前部の方向指示灯の形状が変更されたが、同時期にフェイスリフトされた姉妹車の400とは異なり新しいグリル(1992年のR17 ローバー・800のフェイスリフトで再導入された)やボディ同色のバンパーは与えられなかった。このことにより400の新しいグリルを200に取り付けるオーナーが現れた。1993年にローバーはようやく200シリーズに新しいグリルとボディ同色バンパーを与えた。
コードネームR3 はホンダ車を基としていた先代R8よりも小型化された。これはこの時点ですでに発売以来15年を経ていたメトロを代替するためというローバーのやむに已まれぬ事情があった。先代の200/400シリーズから継承した部分(最も知られているのは前部構造部、ヒーター、ステアリング、前輪サスペンション)もあったが、大部分はローバー自身が開発した全くの新型車であった。ホンダはローバーでの6万台分の生産能力を明け渡してコンチェルトの生産をロングブリッジ工場から自社のスウィンドン工場へ移した結果、この車の開発初期のボディ設計に手を貸しただけとなった。この時点ではこの新型車は先代の後部床構造とサスペンションを切り詰めた設計で、コードネームもSK3であった。
荷室容量の不足とその他の要因によりローバーは車体後部を再設計してマエストロの後輪サスペンションを改良したものを使用することとし、名称もR3と変更された。この車が発売された前年にはローバーはBMWに買収されており、ホンダとは既に「離婚」した後であった。新しい200にはMG・MGFに搭載された1.8 L 版で知られるKシリーズ・ガソリンエンジンとLシリーズ()ディーゼルエンジンが使用された。1990年代半ばの時期においてLシリーズ・エンジンは全般的な性能でフォルクスワーゲンのTDIエンジンに次ぐと見なされるほど非常に競争力のある製品であった。R8のXUD型エンジンよりも性能は向上しており、洗練度ではほぼ同等である一方で特に燃料消費率が優れていた。
1.4i 16v (105 PS (77 kW; 104 bhp))、1.6i 16v (111 PS (82 kW; 109 bhp))のガソリンと2.0 ターボディーゼル(86 PS (63 kW; 85 bhp)とインタークーラー付の105 PS (77 kW; 104 bhp) 版といったエンジンを搭載して発売され、後には1.1i (60 PS (44 kW; 59 bhp))、1.4i 8v (75 PS (55 kW; 74 bhp))と1.8 16vの標準型 (120 PS (88 kW; 118 bhp))、可変バルブタイミング型 (145 PS (107 kW; 143 bhp))エンジンが追加された。R8 ローバー・200から引き継いだプジョー/ローバー製R65型マニュアル変速機が全モデルに提供され、1.6i 16v エンジン搭載モデルにはオプションのCVTが選択できた。
R3では内装は完全に一新され、ダッシュボードには新しい安全基準に適合するように助手席側エアバッグが内蔵された。
1.8 Lモデルはその性能に対してある一定の称賛が寄せられ、インタークーラー付ターボディーゼル車は1990年代終わりの時期の市場で最も加速の速いディーゼル搭載ハッチバック車の1台と言われた。
先代モデルとは異なりR3にはクーペ、カブリオレ、ツアラーといったモデルは用意されなかったが、ローバーはこれらの先代モデルに軽いフェイスリフトを施してR3の新しいダッシュボードを取り付けた。これは新旧世代で車室前方隔壁を共用していたために可能であった。イギリス国内ではこれらのモデルは200/400という呼称は使用されず、単にローバー・クーペ、カブリオレ、ツアラーと呼ばれた。
ローバー・200はスーパーミニとして市場に投入されていれば同時期のフォード・フィエスタやボクスホール・コルサといった大きさや排気量の面で近い車と比較されたであろうが、ローバーはこの車にフォード・エスコートやボクスホール・アストラに匹敵する値付けをした。この時期にローバーが持っていたスーパーミニ・クラスの持ち駒は旧態化したメトロのみであり、社内のモデルライン中のこのギャップは埋める必要があった。
第3世代の200は当初人気があり、イギリス国内では1996年から1998年まで新車販売数第7位の地位を占めていた。しかし3年も経ると完全に上位10位から脱落し、フォルクスワーゲン・ポロやプジョー・206といった不人気車の常連よりも販売は低迷するようになった。
1997年のフランクフルト・モーターショーで発表されたローバー・200 BRMは報道陣や観客からの好評を受けて1年間の開発期間を経た1998年10月にブリティッシュ・モーターショーでローバー・200 BRM LEとして公式に発表された。このモデルはシリーズ頂点のViを基にしていたが、1960年代のBRM風のデザイン上特徴を有していた。搭載エンジンは通常の出力の1.8 L VVC Kシリーズであった。
内装では赤いキルト風皮革の座席とドア内装パネル、赤色のカーマット、シートベルト、ハンドルを備えていた。軽金属製の空調レバーとアルミニウム製の加飾がこれを映えさせていた。外装ではブルックランズ・グリーン(Brooklands Green)の塗装、各所に配された銀色の加飾、大径16のアルミホイール、前バンパーのオレンジ色に枠どられた開口部上の目の細かい網目の特製グリルは1960年代のF1における全てのBRM車の鼻先を飾るトレードマークであった。
技術的な変更はViよりも最低地上高が低められてダンピングと操縦性が向上し、ローバー・220 ターボから更に進化したトルセン()・デフ付クロスレシオトランスミッションを備え、トルクステアは低減され直進安定性が向上していた。
オプションのカーエアコン、助手席エアバッグ、CDプレーヤーを除いた価格は£1万8,000であった。イギリス国内向けに僅か795台のみが、海外市場向けに別に350台が生産された。この法外な価格は当初£1万6,000へ下落し、ローバー・25が発売された時点でショールームに売れ残っていた分を一掃するために£1万4,000へ引き下げられた。
NCWR(New Car Whiplash Ratings)機構はローバー・200をテストし、以下の評価を与えた:
G = 優(Good)
A = 良(Acceptable)
M = 可(Marginal)
P = 不可(Poor)
ローバー・200は自動車雑誌から比較的良好な評価を受けた。
ローバー・25(社内コードネームJewel )と改称されたフェイスリフト版は1999年秋に2000年モデルとして発売された。このモデルは大型の75と似た顔周りを与えられた。シャーシはスポーティな操縦性を持つように改良され(サスペンションとステアリングは200viの設定から)、顔周りは旗艦モデルである75で初めて導入されたローバー車共通の特徴を持つようにデザインし直された。数多くの安全面での改良や内装の変更が行われたが、25は200シリーズの焼き直しモデルとしか受け取られなかった。1.4 L、1.6 L、1.8 Lのガソリンエンジンと2.0 Lのディーゼルエンジンは全て前モデルから引き継いだもの。CVTトランスミッションもR3 200からの継続使用部品であり、「ステップトロニック」('Steptronic' 後にBMWに吸収合併以後は「ステップスピード」:'Stepspeed'と改称)セミオートマチックトランスミッションは2000年遅くから提供された。R65型MTも継続使用部品であったが、後の2003年半ばにフォード製の'IB5'型に取って代わられた。
ローバー・25には、前モデルのローバー・211i(バッジでは単に「Rover 200」)の1.1 L シングルカム 8バルブのKシリーズエンジンに代わり2000年秋から1.1 L 16バルブのKシリーズが導入された。この発展型エンジンは出力が60 PS (44 kW; 59 bhp) から 75 PS (55 kW; 74 bhp)へ向上していた。
ローバー・25が発売された1年も経ない内にBMWはローバー・グループを£10という象徴的価格でフェニックス・コンソーシアム()へ売却した。2001年夏に新生「MGローバー・グループ」はローバー・25のスポーティ版MG・ZR()を導入した。このモデルはスポーティなサスペンションと共に「ホットハッチ」の外観を持つように内装と外装のデザインに変更が加えられた。このシリーズで最も大きなエンジンは1.8 VVC 160 PS (118 kW; 158 bhp)であり、最高速度はに達した。この車は幾度もイギリス車の中でベストセラーのホットハッチ車となった。
2003年にローバーは「ストリートワイズ」()と呼ばれる最低地上高を上げ、大型のバンパーを与えたモデルを生み出した。この車はローバーにより「アーバン・オンローダー」(urban on-roader)という位置づけで販売され、25のライトバン版である「ローバー・コマース」(Rover Commerce)も導入された。
2004年になりローバー・25/MG・ZRが特に内装デザイン面で古めかしくなってくるとMGローバーはこの車に新鮮味を与えるために外装デザインにも手を加えた。重点的な変更は内装の変更であったが、全く新しい顔周りへの変更も含まれていた。これらの2モデルは、会社自体が財産管理下に置かれた2005年4月に生産が一時中断された。2005年3月には25は「このコンパクトハッチ車は5年落ちの個体でも購入を勧めることのできる機能性と価値を持つと判断されるものである。」として権威ある「オートエクスプレス・ユーズドカー賞」(Auto Express Used Car Honours)を受賞した。
2005年初めに中国の上海汽車がMGローバー・グループの新しい所有者であり車の生産治具を所有する南京汽車を通じてローバー・25の設計に関する仕様を購入した。2008年にSWと改名されたストリートワイズが中国で発売された。
ローバー・25は2000年4月に事実上イギリスでのベストセラー車になった。
25は2001年に自動車安全性試験であるユーロNCAPにかけられ、以下の評価を受けた:
NCWR (New Car Whiplash Ratings)機構がフェイスリフト後のローバー・25をテストし、以下の評価を与えた:
G = 優(Good)
A = 良(Acceptable)
M = 可(Marginal)
P = 不可(Poor)
ローバー・25はサッチャムの新型車セキュリティ評価(New Vehicle Security Ratings:NVSR)機構によりテストされ、以下の評価を記録した:
ローバー・25は自動車雑誌から様々な高評価を受けた。
ローバー・200 (1995–1999)とローバー・25 (2000–2005)に搭載されたエンジン。各々のエンジンは定期的に改良を施され経済性と環境性能が改善された。
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