三菱・ミラージュ
三菱・ミラージュ
ミラージュ(MIRAGE)は、三菱自動車工業が1978年3月から2002年8月まで製造・販売していたBセグメント - Cセグメントクラスの小型乗用車、および2012年4月からタイで生産・販売しているAセグメントクラスの小型乗用車。
2002年までは、初代ミラージュ誕生と共にできたカープラザ店のみでの販売となっていた。また、欧州にはとして輸出されていた。
三菱初のFF車として発売され、2002年までは三菱自動車の小型車の主力車種としてラインナップされていた。ランサーとの関係が深く、初代・2代目には派生車種としてランサーフィオーレがラインナップされ、3代目から5代目までは完全姉妹車の関係となった。2012年からはタイで生産・日本で発売されるコンパクトカーとなっており、2020年現在、日本国内でラインナップされる三菱自社生産のガソリン車では唯一の非ミニバン・トールワゴン・SUV車である。
(ハッチバック 1978年-1983年,セダン 1982年-1983年)
エンジンは、横置きのSOHC・直列4気筒のガソリンエンジンのみで、排気量は1.2L(オリオン・G11B) と1.4L(オリオン・G12B)で、後に1.6L(サターン80・G32B)が追加された。また、初代のみの特徴としてチルトボンネットを採用している。マニュアルトランスミッションは、スーパーシフトと呼ばれる2速の副変速機を持つことが特徴であり、主変速機と合わせ、4×2速の8速として使用できた。ミラージュは、エンジンとトランスアクスルの配置の関係から、トランスアクスルへの入力をエンジン本来の回転方向と逆転させる必要があり、副変速機は、そのために設けられたギアを利用している。サスペンションは、フロントはマクファーソンストラット、リアはミラージュ独自のトレーリング式U字型サスペンションと呼ばれるトレーリングアーム式の4輪独立懸架を採用した。スプリングは、前後ともコイルスプリングを用いる。
エクステリアは張りのある曲面で構成したシンプルでクリーンなスタイリングで、ボディ表面の凹凸を極力無くしたフラッシュサーフェス処理を当時の大衆車としては世界でもいち早く取り入れた。また、細いピラーと広いガラス面積で近代的なイメージとしている。発表翌年の第49回ジュネーブ国際モーターショーではモスト・ビューティフル賞の3ドア部門で1位となった。このデザインは米国のアートセンター・カレッジ・オブ・デザインへの留学経験を持つ社内デザイナー大島雅夫によるもので、「青いリンゴ」の若々しいイメージから発想したものと言われる。ボディカラーはイエロー、イエローグリーンなどの鮮やかな色を主体とし、当時国内で流行していたホワイトはあえて低価格車のみとした。尚、大島がデザインした3ドアハッチバックを元にして派生した5ドアハッチバックは樫沢一也、4ドアセダンは江口倫郎と青木秀敏のデザインであった。
ライト類やワイパーのスイッチはレバー式ではなく、インパネの左右にスライドスイッチ式のものを配置。マイナーチェンジでロータリー式となってステアリングコラムの左右に位置が変更され、2代目まで踏襲された。
ミラージュの発売に合わせ新規ディーラーとしてカープラザ店が展開され、映画『未知との遭遇』とのタイアップや、日本テレビと組んでのアメリカンフットボールの試合である「ミラージュボウル」の開催によるプレキャンペーンを行うなど、大規模なプロモーション展開を実施した。
(ハッチバック/セダン 1983年-1987年,バン/ワゴン 1985年-1992年)
2代目ミラージュは初代の4ドア車のプラットフォームをキャリーオーバーしたフルモデルチェンジ車。ボディタイプは、3ドアハッチバック、5ドアハッチバック、4ドアセダンの構成で、これは初代と同じであるが、発売2年後の1985年にステーションワゴンとバンが追加された。なお、5ドアハッチバックはこの2代目以降2012年の6代目で復活するまでラインアップから消えている。
エクステリアデザインは、初代のシンプルで張りのある曲面を用いた先進的なイメージや、細いピラーと広いガラス面積のデザインは継承しながら、傾斜を強めたウインドシールドとより長い全長(3ドア車)によって伸びやかなフォルムとなった。フロント周りは、ボディ色のフロントグリル、フェンダーまで回り込んだボンネット、サイドに大きく回り込んだフロントコンビネーションランプなどを特徴とし、リア周りは、ボディ色で上下に仕切られたリアコンビネーションランプが特徴だった。リアホイールアーチは台形形状で、同時期に発売された3代目ギャランΣやトレディア、コルディアとも共通性があり、この時代の三菱車の特徴であった。なお、3ドアハッチバックから派生した4ドアセダンは青木秀敏のデザインで、その姉妹車の2代目ランサー・フィオーレはほぼ同じデザインであった。
エンジンは基本の1.3L、1.5Lと、高性能な1.6Lターボや、1.8Lディーゼル、またパワーを必要とする時は4気筒、必要としない時は2気筒に自動的に変わる1.5L MDエンジンを装備した車種もラインナップされた。
また、1985年からはワンメイクレース「ミラージュカップ」が開催され、1998年の終了まで人気を博し、ミラージュ自身もモータースポーツのベース車として一定の支持を集めた。
1985年から2008年までは、マレーシアの自動車メーカー、プロトンによってミラージュセダンをベースとするプロトン・サガが販売されていた。
また、1984年の2形マイナーチェンジCMでエリマキトカゲを起用し、日本にエリマキトカゲブームを巻き起こすきっかけになったことでも知られている。
(ハッチバック 1987年-1991年,セダン 1988年-1991年)
発表当時のキャッチフレーズは『社交性動物 ミラージュ変新』。バブル景気の中で登場した3代目は同時期に登場したギャランを小さくしたデザインとなり、丸みを帯びたスタイルとなった。上述の通りワゴン・バンはモデルチェンジされず、2代目を継続。同時期にランサーも5ドアセダン版としてモデルチェンジしており、プラットフォームも含めてランサーと完全に統合された。テレビCMは一貫して松任谷由実の楽曲を使用した事が有名で、コンサートツアーの冠スポンサーとなった。
(ハッチバック/セダン 1991年-1995年,クーペ 1993年-1995年)
曲線のデザインになる。ボディタイプは今まで通り3ドアハッチバックと4ドアセダンの2種類であるが、ランサーと同じプラットフォームでありながらフロントマスクやセダンの6ライトウィンドウ採用などランサーとの差別化が図られている。のちに世界最小の1.6L V6・4カムOHC(片バンクあたりDOHC方式)エンジンを搭載した「ミラージュ6(-シックス)」(4ドアセダンのみ)が発売され、また、2ドアクーペのアスティも登場した。また、マレーシアにおいてはプロトンによって、ミラージュがベースのサトリアおよび、ミラージュアスティがベースのプトラが販売されていた。
5代目はキープコンセプト。特にハッチバックとアスティは先代のイメージが強く残っているが更にハッチバックは独特のフォルムにもなっている。一方でセダンは再びランサー・ランエボⅣとボディパネルを同一化し、先代の6ライト化のような大掛かりな差別化は無くなり、グリル形状、クリアターンランプ採用とトランク部分のガーニッシュ不採用という違いのためスッキリとした印象となる。また、FTOと同じマニュアルモード付きのINVECS-IIを搭載したモデルも存在した。V6エンジン搭載車(セダン専用)は1.8Lに拡大されたものの、コスト削減のあおりを受けてメカニズム自体は24バルブでありながら2カムOHC方式(片バンクあたりSOHC方式)にグレードダウンを余儀なくされた。同時に、使用するガソリンが無鉛プレミアムから無鉛レギュラーに変更された。1999年1月に発売されたミラージュディンゴは本モデルがベースではない。
世界戦略車のコンパクトカーとして10年ぶりに復活。なお、ヨーロッパでは商標上の理由(ゲンバラが既に使用している)から「スペーススター」の車名が使用されるが、それ以外の地域では「ミラージュ」の車名で販売される。また、2012年8月に日本でも公式発表となり、12年ぶりにミラージュが復活した。日本国内においては当時Cセグメントにあった先代ミラージュより2つ下の車格(Aセグメント)に当たる。軽乗用車を除くエントリーモデルの役割を果たすべく、Bセグメントに位置していた先代のコルトよりもさらにダウンサイジング化が行われ、特に全幅は他の一般的なコンパクトカーより3cmほど小さく設計するなど、5ナンバー枠ぎりぎりのコンパクトカーを敬遠するユーザーの取り込みを意識した設計となっている。
今回は、タイの現地法人「Mitsubishi Motors Thailand」にて、日本を含む全世界向けの全量が生産される。価格を落とすために、部品の現地調達率を70%以上にし、また軽量化のため高張力鋼板を従来のコルトと比較し、2割利用範囲を拡大。7%ほど軽量化をした。
コスト削減はパーツの大きさにまで及び、例えばヘッドライトのサイズは個性を演出するための重要なファクターと認識しつつ、部品メーカーから1つのパレットに1個でも多くのヘッドライトを納入してもらうべくパレットのサイズとヘッドライトのサイズのバランスをミリ単位で協議を重ねて決定した。今回のためにバンコク郊外に新設された「タイ第3工場」では日本国内同様のクオリティゲート方式で生産され、タイ出荷前と日本陸揚げ後の2重の検査により高い品質を確保している。
日本仕様では、軽量&高剛性ボディに1.0L 3気筒DOHC12バルブ・MIVECエンジン(3A90型エンジン)とジヤトコ製の副変速機構付CVT「INVECS-III」を搭載し、多岐にわたる軽量化や徹底的な空気抵抗・走行抵抗の低減を行った(Cd値は0.27を達成している)ことで、アイドリングストップシステム「AS&G(オートストップ&ゴー)」搭載車は27.2km/L(JC08モード、平成27年度燃費基準+20%達成)、非搭載車でも23.2km/L(JC08モード、平成27年度燃費基準+10%達成)の優れた低燃費を実現した。また、最小回転半径4.4mと前方の車両感覚がつかみやすい設計としたことで、取り回しのしやすさや運転のしやすさを追求。高効率パッケージの採用により大人5人でも十分な居住空間と日常生活に不足のない荷室容量を確保した。車両本体価格は99.8万円から128.8万円に設定されており、購入しやすくしている。
日本での発売当初、三菱自動車は2012年度内の目標販売台数を30,000台としていた。しかし実際の販売実績は半分の15,000台強にとどまった。東洋経済オンラインでは、その理由を「先進国における環境対応車」と「新興国におけるエントリーカー」の二足のわらじを履かせようとした点にあるという見方を示している。
詳しく見る