ローバー・800
ローバー・800
800は、ローバーとホンダが共同開発を行い、ローバーブランドで販売していた自動車である。
1980年代初頭、経営難に陥っていたブリティシュ・レイランドは開発費を捻出できないことから、陳腐化し信頼性にも問題を抱えた同社の最上級車種であるSD1を刷新できない状態でいた。一方、1979年から提携関係にあった日本の本田技研工業(ホンダ)では、アコードの上級車種の販売を計画していたものの、高級車開発のノウハウがないことから、開発に際しお互いの思惑が一致し共同開発を行うことになった。
1985年にホンダよりレジェンドが先に発売され、ローバー・800は翌1986年に発売された。ホンダ製 2.5L V6 SOHC24バルブエンジンと、自社製 2L 直4 DOHCエンジンが搭載されていた。プラットフォームはレジェンドと同一としながら、エクステリアやインテリアはローバーらしい雰囲気のものとされた。上級グレードにはイギリスの名門であるコノリーレザー製レザーシートや、ハンドメイドで製作するウォールナットパネルが装備された。
レジェンドが1990年にモデルチェンジされて2世代目に移行した一方、ローバー・800はマイナーチェンジを受けながらも1999年まで継続して販売された。途中1992年のマイナーチェンジ(R17系)では、フルスキンチェンジとも言うべき外板が一新され、当初のモデルに比べて丸みを帯びた外観となっている。
1998年に生産中止され、翌1999年になって後継となるローバー・75が発売された。
ローバーは800のアメリカ合衆国への輸出を待望したが、同社はSD1の低品質と低信頼性による失敗に伴って同国市場から撤退を余儀なくされたばかりであった。そこで、同地の消費者のあいだで劣悪なイメージが定着したローバー・ブランドによる再進出は困難と判断、新たなブランドとして「スターリング()」が北米販売用に創設された。
アメリカ合衆国でのディーラー網構築後、イギリスの工場で生産されたアメリカ市場向けローバー・800たる「スターリング 825L/SL」が1987年から1988年まで、「スターリング 827L/SL」が1988年から販売された。期待に反してスターリングでも品質問題が発生、調査会社JDパワーにも酷評されたことで販売は低迷、1991年には廃業・販売中止となった。
一方ホンダは1986年に、レジェンドをフラッグシップとしその下にインテグラなどを揃えた新たな高級車ブランド「アキュラ」を北米で開業、レジェンドの販売も好調で成功をおさめ現在も展開を続けている。
ホンダ製 C25A型 V6 2.5Lを搭載した最上級モデル「スターリング」(Sterling)が販売された。初期の日本向けローバー・800は、本田技研埼玉製作所(狭山工場)で生産が行われた。当初は左ハンドル仕様車も設定されていた。
1989年にマイナーチェンジされ、V6エンジンが2.7L(ホンダ製C27A型)に拡大された。外装ではバンパーが延長され、アルミホイールの意匠変更を行った。また、従来モノグレードであったが「827スターリング」の他にSD1を彷彿させるような5ドアハッチバック「827ビテス」(Vitesse)、スターリングをベースに布シートとするなど価格を抑えた「827Si」の2グレードが新たに加わった。
日本国内のCMには当初、浅野ゆう子が出演していた。
1993年、フロントグリルの付くR17系へマイナーチェンジ。グレード体系も刷新され、特徴的であったハッチバック「ビテス」、廉価版「Si」はラインナップから外れる。従来の「スターリング」に相当する「827SLi」、新登場のクーペボディを纏う「827SLiクーペ」 、自社製の直4 DOHCを搭載した「820SLi」の3グレードとなる。また、全車右ハンドル仕様車のみの設定となり運転席エアバッグが標準装備とされた。
1994年、両席エアバッグを標準装備とし、円高還元を実行、価格が引き下げられた。
1996年、マイナーチェンジ。ホンダ製V6を廃止し、新たに自社製V6 DOHC 2.5Lへ換装する。外装では素材色であったラバーモールがカラーキー化されるなど少し変化が見られた。グレード体系も見直され「825SLi」、「825SLiクーペ」、布シート仕様の「825Si」が登場する。
1997年、小変更。クーペ及び廉価版Siを廃止。モノグレード化に伴い825SLiを「800SLi」とした。
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